目次
労働契約法とは?
労働契約法とは、労働契約(条件)が合意により成立・変更されることによって、労働者の保護を図り労使関係の安定を目的とするものです。(第1条)
この法律で「労働者」とは、使用者(企業)に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいいます。(第2条)
労働契約は、労働者と使用者が対等の立場で合意・締結・変更すべきものとします。また、就業の実態に応じて均衡を考慮し、仕事と生活の調和にも配慮し、締結・変更をすべきものとします。加えて、労働者と使用者は労働契約を遵守し、権利を行使し、義務を履行しなければならない一方で、権利の行使に当たってはそれを濫用してはいけません。(第3条)
使用者は、労働条件や労働契約を労働者に提示し理解を深めさせなければならず、また労働契約の内容を労働者と使用者が書面で確認できるようにします。(第4条)
使用者は、労働者がその生命や身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければなりません。(第5条)
労働契約法の基本は以上の条文になります。以下では、第6条~第20条までの特に重要な条文をピックアップし、解説していきます。
第6条 労働契約の成立
1 労働者が使用者(企業)に使用されて労働し、②使用者(企業)がこれに対して賃金を支払うということについて、③労働者と使用者(企業)が同意することによって成立する、というのが労働契約法における労働契約です。
なお、民法における労働契約(雇用契約)は「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」(民法 第623条)とあるように、同様の趣旨を示しています。
加えて、民法上の雇用契約は諾成契約であるため、契約の合意について必ずしも書面での締結が必要なわけではありません。
よって労働契約法上での労働契約も諾成契約であり、書面でなくとも労働者と使用者(企業)の合意(意思)があれば、労働契約は成立します。
ただし、一定の事項については書面で通知することが労働基準法で義務付けられています。
詳しくは「【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part1」(連載記事)をご覧ください。
第7条 労働契約の合意と周知
労働契約を締結する際に、その労働契約で定めていない部分は、就業規則で定めている部分の内容が適用されます。この場合、その就業規則が合理的な内容でかつ全社員に周知させている必要があります。
なお、労働契約の内容が就業規則の内容と異なる場合、第12条に該当するもの以外であれば、労働契約の内容が就業規則の内容に優先されます。つまり、「労働者に有利な労働契約であれば、就業規則に優先する」ということになります。
※第12条の詳細は後述の内容をご覧ください。
第8条 労働契約の内容の変更
第6条では労働者と使用者(企業)の合意があれば労働契約が成立するというものでしたが、第8条では労働契約の変更についてもそれが適用されることを示しています。なお、こちらも書面による合意は定めていません。
第9条 就業規則による労働契約の内容の変更
第9条では、労働者に不利益を与えるような内容でかつ労働者の合意がない場合に、使用者(企業)の一方的な就業規則の変更はできない、という内容の条文です。
ただし、次条(第10条)では例外の規定が示されています。
第10条 就業規則による労働契約の内容の変更の例外
第9条では、労働者に不利益を与えるような内容でかつ労働者の合意がない場合に、使用者(企業)の一方的な就業規則の変更はできない、という内容の条文でしたが、以下の事項を考慮して就業規則の変更が合理的だと認められる場合には、労働者に不利益な内容でも就業規則の変更が可能です。
・労働者の受ける不利益の程度
・変更の必要性と内容・程度
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
・その他の就業規則の変更に関わる事情
ただし、あらかじめ就業規則の変更によって労働契約の内容の変更はされないと合意していた部分(就業規則と比較して労働者に有利になる労働契約)については、第12条を除いて、労働契約が優先されます。
※第12条の詳細は後述の内容をご覧ください。
第12条 就業規則違反の労働契約
労働者と使用者(企業)がすでに合意した労働契約(条件)が、就業規則に定められている労働条件の水準に満たない場合は、その部分は無効となり代わりに就業規則がその部分に適用されます。
第15条 懲戒
まず、懲戒処分(戒告・減給・出勤停止・降格・解雇など)を行うためには、あらかじめ就業規則で罰則を明示する必要があります。
したがって就業規則による明示がない場合、懲戒処分を行うことはできません。
「使用者が労働者を懲戒することができる場合」というのは、就業規則で罰則が明示されている場合のことをさします。
その懲戒処分が、労働者の行為の性質や程度を考慮し、社会通念上相当でないと認められるとき、権利濫用としてその懲戒処分を行うことはできません。
第16条 解雇
「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当であると認められない場合」など抽象的な表現に留まっていますが、その労働者の解雇に及ぶまでの経緯の中で使用者(企業)に落ち度があるかないかが争点になります。
ただし、打切補償(労働基準法 第81条)のような解雇の形態もあります。
※打切補償の詳細については「【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part6」をご覧ください。
第18条 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
2 当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。
有期労働契約を通算5年以上結んだ労働者は、使用者(企業)に申込みを行うことで無期雇用契約に転換することができます。
使用者(企業)は、申込みを受けた場合にはこれを拒否することはできません。一方で、労働者にとっての権利なので、申込みがない場合に転換の義務が発生することはありません。
なお、有期労働契約の更新の前後に一定の空白期間があるときは、それ以前の有期労働契約の期間は通算されずリセットされます。
一定期間とは、以下のケースに区別されます。
・1年契約の場合:6ヵ月
・1年未満の契約の場合:その契約期間の半分の期間(例:6ヵ月契約の場合:3か月)
第19条 有期労働契約の更新等
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
雇止めをする客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合に加え、以下の事項のどちらかに該当する場合は、雇止めは認められません。
・有期労働契約を反復して更新し、無期労働契約と実質的に同様の雇用形態になっていると社会通念上認められること
・有期労働契約の期間が満了した時に、契約が更新されると期待される合理的な理由があること
第20条 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
第20条では、①有期労働契約であることを理由に無期労働契約の労働者との労働条件が異なっており、②その労働条件の相違が不合理であると認められる場合に、この有期労働契約の労働条件を法的に認めないとするものです。
不合理であるかどうかは、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮し、それぞれの労働条件ごとに判断されます。
特に、「通勤手当」「食堂の利用」「安全管理」などについて労働条件を相違させることは、特段の理由がない限り合理的とは認められません。
この規定により無効とされた労働条件については、基本的には、無期労働契約の労働者と同じ労働条件が認められます。
総括
今回は労働契約法の特に重要な条文をピックアップし解説しました。全体的な傾向としては、特に有期労働契約の労働者の保護に主眼が置かれています。また、労働者派遣法や労働基準にも大いに関連する法律ですので、是非とも把握しておきたいところです。
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