2018年問題とは?派遣に関わる法改正の諸問題を徹底解説

派遣の2018年問題とは。派遣に関わる法律の改正によって今後起きうる諸問題、いわゆる「2018年問題」について解説します。

2018年問題とは?

「2018年問題」とは、主に「大学」「医療」「派遣」が抱える問題のことを言います。(それぞれに関連性はありません。)
本記事では、「派遣の2018年問題」について記述しています。

事の発端は2012年の労働契約法改正と、2015年の労働者派遣法改正に遡ります。(詳しくは後述します。)

2018年問題とは、これらの改正によって2018年の4月までに派遣社員が「雇い止め」されてしまうのではないか、という懸念から生まれたものなのです。

以下では、過去にどのような改正があり、今後の派遣業界にどのような影響を与えていくかを検証・解説していきます。

労働基準法についての概要

労働基準法とは、労働者すべてに適用される、労働条件の最低基準を定めた法律です。
本記事では、2017年中に改正・施行することが予想される内容について、特に派遣に影響がありそうなものについて解説します。
(2017年2月21日現在)

中小企業における時間外労働割増賃金率の猶予措置の廃止

2010年に改正・施行された労働基準法では、「月間60時間を超える時間の労働が発生する場合は、通常の25%以上の割増賃金率ではなく、50%以上の割増賃金率で計算し支払う」ことが規定されました。しかし、中小企業においてはその負担の大きさから適用が猶予されていました。
今回の改正では、この中小企業に対する適用猶予が終了するものと思われます。ただし、やはり実務へ大きく影響することが予想されるため、改正直後に施行されるといったことはなさそうです。

時間外労働への指導強化

昨今の大企業に対する対応に見られるように、時間外労働への規制が強化されるものと思われます。

労働契約法についての概要

労働契約法は、労働者の保護を図りながら、雇用主との自主的な交渉のもとでの労働契約について定めています。
本記事では、2012年に改正された「労働契約法第18条」の改正をピックアップして解説します。

改正された労働契約法第18条では、以下のように定められています。

同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。

つまり、有期労働契約を締結・更新してから5年後、労働者は有期雇用契約を無期雇用契約へ転換することができる、というものです。
この改正労働契約法の適用は2013年4月1日ですから、同日に有期雇用契約を締結した場合、5年後の2018年4月1日から無期雇用契約への転換が可能になります。

労働者派遣法についての概要

労働者派遣法(以後、派遣法)とは、特に派遣社員として働いている労働者の権利を守るための法律です。
よって派遣法は、派遣会社や派遣先企業が守るべきルールブックということができます。

直近では、2015年(平成27年)に大幅な改正がありました。
本記事では、改正された派遣法の中から「派遣契約の期間制限」をピックアップし解説します。

派遣契約の期間制限

➢ 事業所単位
・派遣先の同じ事業所に派遣できる期間は、原則として3年が限度になります。3年を超えて派遣を継続させる場合は、派遣先の事業所の過半数労働組合などからの意見を聞く必要があります。
➢ 個人単位
・同じ派遣社員を、派遣先の事業所における同一の部署に対し派遣できる期間は、3年が限度になります。

個人単位の期間制限である3年を過ぎてしまうと、その派遣社員は同一の職場で働くことができなくなってしまいます。この、3年を過ぎてしまう最初の日を抵触日といいます。
派遣先企業が抵触日を超えてその派遣社員を継続して受け入れたい場合は、直接雇用の申込みの義務が発生します。

2015年9月30日以降の労働者派遣契約に適用されますから、同年10月1日労働者派遣契約を締結した場合は、3年後の2018年9月30日が抵触日となります。

それぞれの改正で何が変わる?

労働基準法改正の影響

中小企業の適用猶予が無くなることで、正社員の時間外労働に対するコストが多くかかるようになります。これによって、派遣業界には以下のような影響が考えられます。
➢ 時間外労働を無くすことで足りなくなった労働力の確保のために派遣社員を増員
➢ 時間外労働で増加したコストの分だけ、派遣社員の雇い止めが発生

相反する影響になりますが、これは企業によってどのような選択をするかがわからないため、かなり不透明にならざるをえません。ただし、近年の働き方の変化や過労死に対する社会的な注目がありますから、全国的に時間外労働を減らす傾向が出てくる可能性を高く見積もることができるでしょう。

労働契約法改正の影響

2013年4月1日以降に有期雇用契約を締結・更新した労働者は、2018年4月1日から無期雇用契約への転換を申し入れることができます。一部の安定を望む労働者はこの無期転換ルールを活用することが予想され、これによって、派遣業界には以下のような影響が考えられます。
➢ 無期転換を希望するすべての派遣社員を受け入れることが難しい場合、無期転換を阻止するための雇い止めが発生

さらに、以下の派遣法の改正の影響との相乗効果が予想されます。

派遣法改正の影響

2015年9月30以降に労働者派遣契約を締結した労働者は、2018年9月30日が抵触日になります。派遣先企業がこの抵触日以降も当該労働者を雇い入れたい場合、当該労働者と直接雇用契約を結ばなければなりません。逆に言えば、そうでない場合はそこで派遣先企業での勤務が終了することになります。これによって、派遣業界には以下のような影響が考えられます。
➢ 派遣社員との直接雇用の意思がない場合、直接雇用義務の発生よりも前の雇い止めが発生

労働契約法改正の影響との相乗効果で、2018年に派遣社員を含めた多くの有期契約労働者が雇い止めされる可能性が懸念されています。これが「2018年問題」です。

総括

近年、労働者をより強く保護するために、労働基準法をはじめとした法規制の強化が進んでいます。それにより、大きな影響を受けるのは人材派遣会社であり、殊更その派遣会社に勤める派遣社員に最も大きな影響が及ぶことが予想されます。
人材派遣会社としては、派遣社員の保護がその社会的意義のひとつですから、早急かつ的確な対応が求められます。
幸いにもまだ時間的猶予はありますから、余裕を持って対策を立てることが可能でしょう。

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参考サイト

「2018年問題」とは? | 平成27年改正派遣法により派遣社員の有期雇用に関して起きる2018年問題 – カオナビ人事用語集
2018年に大量発生する「無期契約社員」はどんな社員か? | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online

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