【最低賃金の引き上げ】2020年10月から全国的に順次適用へ! 人材派遣会社が押さえておくべきポイントを徹底解説!

新型コロナウイルスに罹患された方、体調を崩されている方、影響を受けられている方へ、
謹んでお見舞い申し上げます。船井総合研究所、人材ビジネス支援部です。

今回は、人材派遣会社を営む経営者・経営幹部の方、今後人材派遣事業への参入を考えている中小企業の経営者様向けの記事です。

10月より各都道府県で順次適用となった最低賃金の引き上げについて、既にご確認はお済みでしょうか。
最低賃金の引き上げは人材派遣会社にとって大きな影響を持ちます。
今回の改訂によって最低賃金はどう変化したのか、どのような影響があるのか、これからどう推移していくのか、人材派遣会社を営む方々にいま押さえていただきたいポイントについてお伝えいたします。

 

 

1.最低賃金制度とは?

初めに、最低賃金制度とはいったい何なのかという説明と、10月から適用された新しい最低賃金についてお伝えいたします。
 

1-1.最低賃金制度とは

 最低賃金制度とは、最低賃金法という法律に基づき労働者の賃金の最低限度を決め、労働者を雇用する企業はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない、という制度です。
 最低賃金は、産業や職種に関係なく同じ都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される「地域別最低賃金」と、特定の産業に対して適用される「特定最低賃金」という2種類に分かれています。
 労働者を雇用する企業は最低賃金未満の金額しか支払わなかった場合、労働者に対して最低賃金との差額分の支払いと、それとは別に罰金の支払いが命じられます。実際には地域別最低賃金を下回った場合は50万円以下、特定最低賃金を下回った場合には30万円以下の罰金が罰則として定められています。
 

1-2.2020年10月から改訂!最新の最低賃金について

 最低賃金とはどのようなものか、その概要はご理解していただけたかと思います。続いて、2020年10月から改訂された最新の最低賃金についてお伝えいたします。
 

図表 2020年10月に改訂された最低賃金について
都道府県名 最低賃金時間額【円】 2019年と比較した増額分 発効年月日
北海道 861 0 令和元年10月3日
青  森 793 3 令和2年10月3日
岩  手 793 3 令和2年10月3日
宮  城 825 1 令和2年10月1日
秋  田 792 2 令和2年10月1日
山  形 793 3 令和2年10月3日
福  島 800 2 令和2年10月2日
茨  城 851 2 令和2年10月1日
栃  木 854 1 令和2年10月1日
群  馬 837 2 令和2年10月3日
埼  玉 928 2 令和2年10月1日
千  葉 925 2 令和2年10月1日
東  京 1,013 0 令和元年10月1日
神奈川 1,012 1 令和2年10月1日
新  潟 831 1 令和2年10月1日
富  山 849 1 令和2年10月1日
石  川 833 1 令和2年10月7日
福  井 830 1 令和2年10月2日
山  梨 838 1 令和2年10月9日
長  野 849 1 令和2年10月1日
岐  阜 852 1 令和2年10月1日
静  岡 885 0 令和元年10月4日
愛  知 927 1 令和2年10月1日
三  重 874 1 令和2年10月1日
滋  賀 868 2 令和2年10月1日
京  都 909 0 令和元年10月1日
大  阪 964 0 令和元年10月1日
兵  庫 900 1 令和2年10月1日
奈  良 838 1 令和2年10月1日
和歌山 831 1 令和2年10月1日
鳥  取 792 2 令和2年10月2日
島  根 792 2 令和2年10月1日
岡  山 834 1 令和2年10月3日
広  島 871 0 令和元年10月1日
山  口 829 0 令和元年10月5日
徳  島 796 3 令和2年10月4日
香  川 820 2 令和2年10月1日
愛  媛 793 3 令和2年10月3日
高  知 792 2 令和2年10月3日
福  岡 842 1 令和2年10月1日
佐  賀 792 2 令和2年10月2日
長  崎 793 3 令和2年10月3日
熊  本 793 3 令和2年10月1日
大  分 792 2 令和2年10月1日
宮  崎 793 3 令和2年10月3日
鹿児島 793 3 令和2年10月3日
沖  縄 792 2 令和2年10月3日
全国加重平均額 902 1

(出所:厚生労働省「令和2年度地域別最低賃金改訂状況」より作成)
 
2020年度の最低賃金引き上げは、「北海道・東京都・静岡県・京都府・大阪府・広島県・山口県」を除く40県にて実施されました。
 昨年度は東京都・神奈川県で最低賃金が1000円台に到達するなど、大幅な最低賃金の引き上げが実施されましたが、今年度は大幅な引き上げには至りませんでした。多くの企業が新型コロナウイルスによる不況の影響を受けたためです。実際に引き上げ額は全ての県において、1~3円の引き上げにとどまっています。

 

2.最低賃金はこれからどうなる?

最低賃金制度の概要や2020年10月から適用された新しい最低賃金について確認いたしました。続いて、最低賃金はこれからどう推移していくのかについて、これまでの推移を踏まえて解説いたします。
 

2⁻1.これまでの最低賃金の推移

図表 最低賃金の全国加重平均額推移(2002年~2020年)
 
(出所:厚生労働省「地域別最低賃金改訂状況」より作成)
 
 上図は、2002年から2020年における最低賃金の全国加重平均の推移を示しています。
ここからからわかるように、最低賃金は2000年代以降増額し続けています。増額の程度としては、2002年時点では663円であった全国加重平均が2020年には902円と36%も増加しています。
 またこの図表からは、2019年から2020年にかけての1年間は最低賃金がほぼ横ばいで推移していることも見て取れます。先述した通り、今回の最低賃金改訂は新型コロナウイルスによる不況もあって、例年と比較して小規模な引き上げであったということが言えます。
 

2⁻2.今後の最低賃金の動向

 先ほどの図表から、最低賃金はこれまで増額傾向にあったということを指摘しました。では今後の動向としてはどうなるのでしょうか。
 結論から申し上げますと、今後も最低賃金増額の傾向は続くと考えられます。理由としては、2017年に政府が発表した「働き方改革実行計画」にあります。こちらの計画では最低賃金に関して、年成長率3%程度の水準で全国加重平均1000円を目指す、という目標が掲げられました。実際に、この発表がなされた2017年から2019年にかけての3年間は年率3%のペースで最低賃金が増額してきました。今回は新型コロナウイルスの影響を受けてこれまでのペースでの引き上げはなかったものの、長期的には全国加重平均1000円に向けて今後も最低賃金は増額していくと考えられます。

 

3.最低賃金と人材派遣会社との関係は?

ここでは、最低賃金と人材派遣会社との関係性について、人材派遣会社における最低賃金の適用方法や最低賃金が引き上げられることによるメリット・デメリットなどを解説いたします。
 

3⁻1.人材派遣会社における最低賃金の適用方法

 人材派遣会社は、自社に登録している労働者を求人企業に派遣することで収益を上げています。人材派遣会社と派遣先の求人企業が同じ都道府県内にある場合は良いですが、違う都道府県にある場合はどちらの都道府県の最低賃金が派遣労働者に適用されるのでしょうか。その答えは「派遣先がある都道府県の最低賃金」です。
 例えば、東京都の人材派遣会社が千葉県の企業に労働者を派遣したとします。この場合、労働者には派遣先がある千葉県の最低賃金が適用されるため、労働者の最低賃金は時給925円となります。これに対して、人材派遣会社がある東京都の最低賃金は時給1013円と、派遣先がある千葉県より高い水準です。そのため、人材派遣会社にとっては自社が所在する地域の最低賃金水準を上回っていれば、労働者へ支払う給与額に問題は生じません。
 
図表 東京都の人材派遣会社が千葉県の企業に労働者を派遣する場合
(出所:厚生労働省HPより作成、2020年10月16日アクセス、
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-24.htm

 
しかし、千葉県の人材派遣会社が東京都の企業に労働者を派遣する場合では話が変わります。この場合、労働者には派遣先がある東京都の最低賃金が適用されるため、労働者の最低賃金は時給1013円となります。先述の通り、千葉県の最低賃金は東京都の水準よりも低いです。そのため、人材派遣会社にとっては自社が所在する地域の最低賃金水準を上回っていても、労働者へ支払う給与額に問題が生じる、つまり最低賃金水準を下回る可能性があるといえます。
コラムの冒頭でも説明しましたが、支払う給与額が最低賃金水準を下回っていた場合、人材派遣会社は派遣労働者に対して最低賃金との差額分と罰金を支払うことになります。意図せぬ支払い給与の増額や罰金を避けるためにも、派遣労働者には派遣先の都道府県の最低賃金が適用されるということを覚えておきましょう。

 
図表 千葉県の人材派遣会社が東京都の企業に労働者を派遣する場合
(出所:厚生労働省HPより作成、2020年10月16日アクセス、
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-24.htm

 

3⁻2.最低賃金の引き上げによるメリット・デメリット

 人材派遣会社における最低賃金の適用方法について確認いたしました。続いて、最低賃金が引きあがることによるメリット・デメリットを検討していきます。
 
図表 最低賃金の引き上げによる人材派遣会社のメリット・デメリット

 
まず、最低賃金の引き上げによる人材派遣会社のメリットは以下2点であると考えます。
●既存の登録労働者のモチベーションが上がる
●新規の登録労働者が増加する可能性がある
  
 1点目について、最低賃金の引き上げは既に派遣している労働者のモチベーションアップにつながると考えます。なぜなら、派遣労働者の給与が上昇するためです。給与が上昇することによって、正規雇用の社員との格差が是正され、派遣労働者の仕事に対するモチベーションが上がることが見込まれます。仕事のモチベーションが上がると、業務の生産性が改善され、結果的に派遣契約期間の延長などにもつながるかもしれません。
 2点目について、最低賃金の引き上げは新規登録者の増加につながるとも考えられます。1点目のメリットと同様に、給与の上昇が理由です。給与が上昇することで派遣求人の魅力が高まります。それによって派遣求人に興味を持った求職者が集まるため、人材派遣会社としては新規派遣労働者の獲得ができると思われます。
 
一方で最低賃金の引き上げによるデメリットとしては、以下2点があると考えます。
●人件費が増大する
●稼働率が低下する可能性がある
 
 1点目について、最低賃金の引き上げは人材派遣会社の人件費増大につながります。派遣労働者の給与は人材派遣会社が負担するためです。先ほど挙げたメリットは2点とも、最低賃金の引き上げに伴って給与が上昇することで生じるメリットです。給与が上昇することで派遣労働者の満足度が高まる一方、人材派遣会社としてはコストとして人件費が増大するという問題があります。
 2点目について、最低賃金の引き上げによって派遣労働者の稼働率が低下する可能性があります。ここでの稼働率とは、自社に登録している労働者のうち求人企業に派遣されている労働者の割合のことを指しています。たとえば、自社に登録している労働者が10名、実際に派遣されている労働者が7名であった場合、その稼働率は70%となります。先ほども述べたように、最低賃金が引きあがることで人材派遣会社の人件費が増大します。従って、人材派遣会社が収益を確保するためには、求人企業との契約料を高くする必要があります。収益とは契約料から人件費などのコストを差し引いて計算するためです。以上のように、収益を確保するという目的のために契約料金を上げると、求人企業との契約が破棄され登録している労働者を派遣できないという事態につながってしまうと考えられます。

 

4.最低賃金の引き上げにどう対応するか?人材派遣会社が押さえておくべきポイント!

最後に、10月から最低賃金の引き上げが実施されている中、人材派遣会社が押さえておくべきポイントについて、2点お伝えさせていただきます。
 

4-1.給与額が最低賃金を上回っているか確認する

 今回の改訂で最低賃金が変更されなかった7都道府県以外の地域では、各人材派遣会社において給与額が最低賃金を上回っているかどうかの確認が必要になります。賃金改訂によって現行の給与額が最低賃金を下回ることとなった場合、派遣労働者に対して差額分の給与支払いと罰金が生じるためです。給与額が最低賃金を上回っているかどうかの確認方法としては、以下の図表でまとめたように、給与の支払い方によってそれぞれ計算する必要があります。
 
図表 給与の支払い方による最低賃金との確認方法

 
(出所:厚生労働省HPより作成、2020年10月14日アクセスhttps://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-13.htm
 
 また、最低賃金を上回っているか計算するにあたっては以下の図表で示した最低賃金の対象となる賃金を把握している必要があります。対象となっていない賃金によって最低賃金の基準をクリアしたとしても、無効となってしまうためです。
 
図表 最低賃金の対象となる賃金
(出所:厚生労働省HPより作成、2020年10月14日アクセス
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-12.htm

 
 具体的には、時間外勤務手当や休日出勤手当、深夜勤務手当などの所定外給与は最低賃金の対象ではないため、注意が必要です。
 

4-2.最低賃金減額の特例条件を満たしているか確認する

 支払う給与額が最低賃金を上回っているかどうかの確認に加えて、最低賃金減額の特例条件も確認しておくべきです。条件を満たす労働者がいる場合、最低賃金の減額が適用され、人件費の削減につながるためです。具体的に言うと、以下5項目のうちどれかに該当する労働者に関しては、各都道府県の労働局長に申請書を提出し認可を得ることで、最低賃金の減額が適用されます。
 
●精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
●試の使用期間中の方
●基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
●軽易な業務に従事する方
●断続的労働に従事する方
 
 4点目の「簡易な業務に従事する方」と5点目の「断続的労働に従事する方」に関しては、簡易な業務や断続的労働とは何を指すのかわかりづらいと思われますので、説明させていただきます。
 簡易な業務とは派遣される事業所の本来の業務には属さず、当該事業所に同種の労働者がほとんどいない例外的な業務、を指します。具体的には、事業所における片付けや清掃などの業務が該当します。
 断続的労働とは常態として作業が間欠的に行われ、実作業時間と手待ち時間が繰り返される業務、を指します。作業時間が長く継続することなく中断し、しばらくして再び同じような作業が行われ、また中断する、といったような業務のことです。具体的には、学生寮や社員寮といった寄宿舎における給仕係などが該当します。
  
詳しい最低賃金減額の特例条件に関しましては、厚生労働省が交付している減額特例許可記入要綱パンフレットをご参照ください。
 
○精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
 → https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/dl/01-11.pdf
○試の試用期間中の方
 → https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/dl/01-13.pdf
○基礎的な技能などを内容とする認定職業訓練を受けている方の内厚生労働省令で定める方
 → https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/dl/01-14.pdf
○簡易な業務に従事する方
 → https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/dl/01-15.pdf
○断続的労働に従事する方
 → https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/dl/01-12.pdf
 
5.本コラムのまとめ
 本コラムでは、2020年10月に改訂された最低賃金について、その概要と人材派遣会社が押さえておくべきポイントについて確認してきました。
 
 結論としては、
●給与額が最低賃金を上回っているかどうかの確認
●最低賃金減額の条件を満たす労働者がいないかどうかの確認
 という2点について、人材派遣会社を営む皆様には押さえていただきたいと思います。
 
本コラムの内容についての疑問点や、今後の事業存続について不安を抱えている方がいらっしゃいましたら、弊社の無料個別相談や人材派遣会社セミナーをご活用くださいませ。
 


 
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