コロナが派遣業界へ及ぼす影響と新しい取り組みの必要性

新型コロナウイルスの感染拡大は人々の行動を制限し、多くの産業で需要が落ち込み日本経済は大きな打撃を受けています。それに伴い、多くの企業が経済活動の停滞に見舞われ事業存続の危機を迎えています。そして、それは人材派遣業界も例外ではありません。人材派遣事業は、企業に人材を供給することにより利益を得ています。しかし、企業にとって最も大きな固定費は人件費であるため、不況時には企業存続のため人件費が削減されます。そして、まず始めにその対象となるのがパート社員や派遣社員です。人材派遣会社が扱う商品は”人材”であるため本質的な差別化が難しく、故に他の活路を見出すことも簡単ではありません。では、人材派遣会社が今後も事業を存続し生き残るためにはどうすればよいのでしょうか?。本記事では、人材派遣業界が置かれている現状と、その中で人材派遣会社が取るべき行動について解説します。

 

1.コロナが派遣業界へ及ぼす影響

はじめに、人材派遣業界が置かれている現状と今後の動向を解説します。

結論:人材派遣事業は売上維持が難しくなる!
理由①:コロナで企業活動が縮小したことにより労働需要が減少している。
理由②:派遣社員の雇い止めや解雇が増加しており、今後も続く可能性がある。

1-①「コロナによる経済縮小」

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中で人々の行動と企業の経済活動を制限しました。その結果、日本経済の成長率は戦後最大の落ち込みとなりました。

内閣府が8月17日に発表した速報値によると、2020年4~6月期の実質GDPは年率換算で27.8%減少となりました。先のリーマン・ショック時に最大の落ち込みとなった2009年1~3月でも減少幅は17.8%であるため、今回の落ち込みはそれ以上であり戦後最大と言われています。

1-②「労働力需要の減少」

以上のように、新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの企業に経済活動の停滞を余儀なくさせました。そして、それに伴い人員過剰となる企業が増加し、労働力需要が減少しています。図表1は、有効求人倍率の対前年同月比の推移を表しており、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた今年1月から7月まで減少し続けていることが分かります。

【図表1】有効求人倍率の対前年同月比の推移(2019年6月~2020年7月)

ちなみに、全産業の有効求人倍率は減少し続けていますが、業界別でみると労働者数が増えている業界もあります。日本経済新聞社の調査によると、前年同月比で就業者数が増えた業界としては「不動産・物品賃貸」が最も多く、ついで「教育・学習支援」「学術研究・専門・技術サービス」「情報通信」となっています。反対に、前年同月比の就業者数が最も減少した産業が「宿泊・飲食サービス」であり、次いで「建設業」「生活関連サービス・娯楽」となっています。その他就業者が減少した産業としては、「卸売・小売」「農業・林業」「製造業」「運輸・郵便」「医療・福祉」が挙げられています。

1-③「人材派遣需要の減少」

以上のように、求職者の増加から有効求人倍率が低下し、労働力需要が減少していることが分かりました。そして、求職者の増加を裏付けるかのように失業者の数も上昇しています。

厚生労働省の発表によると、7月時点の完全失業者数は前年比で41万人増えた197万人であり、この数字は2010年1月以来の高水準となっています。

図表2は、正規労働者と非正規労働者の前年度比就業者数の推移を表したもので、図表から非正規労働者は新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた1月から7月現在まで減少し続けていることが分かります。そして、日本人材派遣協会の発表によると、派遣労働者の実稼働者数(実際に働いた人数)の4~6月の四半期平均が、前年同期比で1.9%減少したことが分かりました。この数値が減少したのは2013年4~6月期以来であります。したがって、非正規労働者就業者数の減少と共に、派遣労働者需要も減少していることが分かります。

【図表2】正規労働者と非正規労働者の前年度比就業者数推移

今後の派遣労働者需要の動向としては、派遣切りや雇い止めが更に増加する恐れがあります。新型コロナウイルスの終息が見えない現状においては、企業も経済活動再開の見通しが立てられません。政府が企業の雇用維持のために行っている雇用調整助成金制度も、財源の問題からその持続可能性が危惧されています。したがって、コロナウイルスの感染動向や政府の政策転換によっては、今後も更に派遣労働者の雇い止めが増加する恐れがあります。

2.人材派遣会社がとるべき行動

次に、派遣労働者需要の回復が見込めず売上維持が難しくなるなか、人材派遣事業者は事業存続ために何を行えばよいかについて解説します。

結論:事業存続のためには新規事業や新規サービスの開拓で売上アップを模索するべきである!
理由①:人件費の削減は、会社の競争力を維持するために行うべきではない。
理由②:経費削減には限りがあるため、長期的に事業を維持するためには売上を伸ばす努力をすべきである。
理由③:他業種への参入は障壁も高くコストもかかる上に確実な効果は見込みにくい。
理由④:既存領域で新規事業・新サービスを付加する方が効果を見込みやすく、既存事業とのシナジーの創出も狙える。

 

2-①「経費削減による事業存続」

事業存続のためには、経費を削減し費用を抑えるか売上を伸ばすしかありません。そこで、まず経費削減の可能性について解説します。

企業にとって一番の固定費は人件費であり、人材派遣会社は主に登録者管理のための事務職員と、マッチングのためのコンサルタントを雇っています。したがって、ここではそれらの人件費の削減の可能性について説明します。

人材紹介会社の多くが、就業を希望する登録者の管理に大きな人員的コストを割いています。ですが、それらのコストは人材管理ソフトを導入、または刷新すれば削減できるかもしれません。しかし、システムの導入にも大きな費用が掛かります。新型コロナウイルス終息の目途が立たず、派遣労働需要の回復も見込めない現状においては、安易にキャッシュを減らすべきではありません。加えて、今後は失業者の増加に伴い求職者が増加すること予想されるため、登録者の増加に備えるためにも管理体制は維持することが望ましいと言えます。したがって、事務職員は削減するべきではありません。

コンサルタントに関しても同様に、安易に削減するべきではありません。何故なら、コンサルタントを削減してしまうと新型コロナウイルス終息後に本業の競争力が低下してしまう恐れがあるからです。未経験者を雇ってコンサルタントとして会社の戦力になるまで育成するには、金銭的コストや時間的コストもかかりすぎてしまうため、この方法も得策ではありません。

ここでは経費削減のために人件費削減の可能性について説明し、人件費の削減はすべきではないと結論付けました。ですがもちろん、他の方法で経費の削減ができる可能性もあるため、その場合は経費削減を行うべきでしょう。しかし、経費の削減には限りがあります。新型コロナウイルスが終息したとしても労働需要が以前の水準まで回復するまでには長い時間がかかるとも言われています。したがって、長期的な派遣労働需要の低下に備えるためにも、売上を伸ばす方向に努力することをお勧めします。

2-②「売上アップによる事業存続」

次に、売上を伸ばすための可能性について説明します。売上を伸ばすための方法としては、横展開と縦展開のふたつの方向の可能性が挙げられます。

ひとつめの方法は、横の展開として新しい領域での人材紹介に参入することです。1-②で述べた通り、コロナ禍においても生活様式の変容から売上を伸ばし、就業者が増加している業界もあります。したがって、そのような業界に参入することができれば、新たな人材紹介の販路を獲得し売上を伸ばすことができるかもしれません。

しかし実際には、未経験の業界に参入するには業界に対する理解が必要なため、業界に理解があるコンサルタントを新たに雇うか、自社のコンサルタントを育成する必要があります。自社のコンサルタントを育成するには、多くの時間とコストを要します。コンサルタントを雇う場合も、コロナ禍において需要が伸びている業界のコンサルタントは、他の人材紹介会社からも需要が高いため獲得は容易ではありません。そして、参入したとしても既存事業者との競争に晒され、結果として会社の体力を消耗するだけになってしまう可能性もあります。先に述べた通り、新型コロナウイルスの終息が見えない今、参入の障壁が高く効果も見込みにくい新業種への参入は得策ではないかもしれません。

ふたつめの方法は、縦の展開として既存領域で新たなサービスや事業を付加して売り上げを伸ばす方法です。この方法は、ひとつめの方法と異なり、既に業界に対する理解を得ているため、業界のニーズに合わせた新規事業や新サービスを生み出すことができます。加えて既存の紹介事業とのシナジーも図れるため、本業の売上の増加にもプラスの影響を与えることができます。そして実際に今、多くの人材派遣事業者が新サービスや新規事業の開拓に乗り出しています。したがって、人材派遣事業者が取るべき行動とは「新規事業・新規サービスの開拓」であります。

「ではどの様なサービスや事業が考えられるのか?」と思った方は是非船井総研までご相談ください。

参考URL
https://www.jinzai-business.com/295
https://www.jassa.or.jp/keywords/index3.html
https://www.jassa.or.jp/keywords/index1.html
https://www.jinzai-business.com/334

 

 

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