職業紹介業(人材紹介業)の市場規模と今後

人材紹介業の市場規模を分析、解説します。また、今後の職業紹介業の動向や課題についても解説します。

職業紹介業の概要(人材派遣業との違い)

職業紹介業は、厚生労働大臣の許可を受けて職業を紹介する業態のことを指します。
ここで、同じ人材ビジネスの人材派遣会社との違いをご説明します。

人材派遣会社も厚生労働大臣の許可を受けて事業を行っている点では同様ですが、職業を紹介することに加えて、その雇用者と雇用契約を結び派遣先企業に派遣する業態のことを指します。

一方で人材紹介会社は、取引先企業に候補者を紹介し、雇用が決定した場合に雇用契約を結ぶのは取引先企業とその候補者になります。つまり、最も大きな違いは雇用契約を結ぶか結ばないかの点になります。

また、ビジネスモデルでも相違があります。
後述しますが、人材派遣業では継続的に収入が得られる一方で費用も多くかかるので利益率は低めですが、職業紹介業では原価がほとんどかからないために利益率が高い傾向にあります。

売上構造
職業紹介業では紹介手数料として成功報酬型を用いることがほとんどです。紹介手数料(報酬)は、市場において特に定められているわけではありませんが、求職者の想定年収の30%~35%が相場のようです。よって、想定年収が400万円であれば(400×30%=)120万円の報酬が発生するということです。

上記のように、1人の求職者と求人者のマッチングに成功すれば100万円以上の報酬が発生するわけですが、実は求職者1人あたりの原価はほとんどかかっていません。
人材派遣業と異なり、特に教育訓練を求職者に施す必要がありませんから、同じ人材ビジネスでも原価率が飛びぬけて良いのです。

一方で、人材派遣業の売上構造はどうなっているのでしょうか。

派遣会社や派遣社員の職種によって多少の違いはありますが。派遣料金の70%は派遣社員の賃金が占めています。
加えて、派遣会社が派遣社員の雇用主として負担する社会保険料が10.5%です。
また、派遣社員にも当然発生する有給休暇の費用も派遣会社が支払います。以上までで、派遣社員に関連する費用で全体の8割強を占めています。
そこから、会社経営に関わる諸経費を差し引き残った1.6%が派遣会社の営業利益になります。
このように、意外にも派遣会社の利益率は高くないことがわかります。

売上ベースでみる市場規模

※記事作成時点(2017年1月現在)で判明、確定している資料に基づきます。
人材サービス産業全体の市場規模は、およそ8兆円です。
これは、近年伸びてきている介護や損害保険などと匹敵する規模ですから、かなり大きい市場であるということができます。

では、人材サービスの個々の市場規模を見てみましょう。

人材派遣
➢5兆円

請負
➢1.5兆円

求人広告
➢1兆円

職業紹介
➢3000億円

最も大きいのは人材派遣の市場である一方で、職業紹介は最も小さい市場であることがわかります。

そんな職業紹介業界ですが、実は今最も注目すべき業界であるといえます。

職業紹介業のメリットとは

なぜ、市場規模的には大きくない人材紹介が注目されるのでしょうか。それは、以下にあげるメリットがあるからです。

求人企業側のメリット
➢採用が決定した時の成功報酬型のため、費用対効果が確実に得られる
➢採用の実務を軽減できるため、コストの削減になる
➢秘密裏に採用を行いたい場合などに有利
➢採用を急いでおり、公募では間に合わない場合に有利

求職者側のメリット
➢登録や相談が無料のため、コストがかからない
➢キャリアコンサルタントが介在するため、最適な企業を紹介してもらえる
➢選考過程で様々なサポートを得られる
➢企業の情報が事前にわかるため、ミスマッチが少ない
➢在職中でも転職活動が行える

このように、利用する企業と求職者共にメリットが大きく、社会的貢献性の高い事業といえます。

一方の人材派遣業は、近年規制強化の流れになっています。
また、一部の企業のいわゆる「派遣切り」があってから、特に求職者にとって派遣会社に対するマイナスイメージが色濃くなってきています。
しかし、併せて働き方の多様性も浸透してきており、「自由」に「安全」に働けるという部分が大きなメリットとして、利用者に支持されています。

取扱求人数ベースでみる市場規模

※記事作成時点(2017年1月現在)で判明、確定している資料に基づきます。
求職者にメリットが大きい職業紹介業ですが、求人企業にとってもメリットが大きい、それどころか、実際には人材派遣業よりもニーズがより高いのです。
先ほどは売上ベースで市場規模を見ていましたが、今度は取扱求人数ベースで市場規模を見てみましょう。

人材派遣
➢69万件

請負
➢3.2万件

求人広告
➢138万件

職業紹介
➢557万件

取り扱い求人件数では職業紹介が最もニーズが高いことがわかります。
公募では求めている人材が集まらなかったり、派遣ではミスマッチが起きてもコストがかったり、そういったデメリットを解消してくれるというメリットが、最も注目されている点だといえるでしょう。

総括-職業紹介業の今後

職業紹介業の市場規模は年々増加傾向にありますが、将来的にはどうなっていくのでしょうか。

雇用構造の変化

女性雇用者がかなり増えてきている今、働き方もかなり変わってきています。
更に、超高齢化社会が目前に迫っていることから、高齢者も徐々に労働市場へ参入してくることが予想されます。

これらの問題は、求職者のキャリアプランのサポート、キャリアチェンジの支援、中高年層の活用などの必要性を示唆しています。

特に、「中高年層の活用」では、リストラの対象になった社員(特に中高年層が多い)の再就職を支援する「再就職支援型」の職業紹介事業が活躍する可能性を秘めています。

サービス経済化

2020年にかけて、サービス職は105万人、専門技術職は43万人増加し、運輸通信職は323万人減少するといわれています。
このような職種間の就業者の移動は、働き手にとっては容易なことではありません。特に中途採用では即戦力が求められますが、自分の経験上にやったことのある職種や業種への移動は困難になってくるでしょう。
表面上は関係のない職種や業種でも、求職者ひとりひとりの適性やスキルを異業種に活かすサポートの必要性が示唆されています。
ここで、キャリアコンサルタントの出番になります。
職業紹介業においては、就業中でも転職活動ができるという強みを生かしながら、求職者にとって最善のキャリアチェンジをサポートすることが期待されます。

グローバル求人の増加

企業の海外進出に伴い、現地で人材を採用するケースに加え、海外の人材を日本国内で募集する企業も増加傾向にあります。
特に、平成26年度における海外からの求職者の申込数は前年度比で50%近く増加しています。一方で、就職件数は増加したり減少したりと安定せず、背景には国ごとに異なる手続きの煩雑性にあるようです。職業紹介業としては、各国のマーケットに対応し、また外国人の日本での就労をサポートする「就業管理機能」としての役割を果たすことが期待されます。

以上のように、日本の労働市場に控える課題は多いです。しかし、課題が多いということは、人材サービス業としてはこれとないビジネスチャンスということができるのではないでしょうか。特に、職業紹介業に対する社会的期待は大きく、それだけに責任の大きい業界といえるでしょう。

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参考サイト

リクルートワークス研究所 | Works Institute‐人材ビジネスの市場規模・事業展望

リクルートワークス研究所 | Works Institute‐2020年の「働く」を展望する 成熟期のパラダイムシフト

株式会社矢野経済研究所―人材ビジネス市場に関する調査を実施

一般社団法人 日本生産技能労務教会-2020年の労働市場と人材サービス産業の役割

平成26年度職業紹介事業報告の集計結果 |報道発表資料|厚生労働省

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