人材紹介事業の成長性
少子高齢化による労働人口の減少
日本は少子高齢化が進んでおり、今後ますます生産年齢人口が減少していくと言われています。
生産年齢人口とは15歳から65歳までの労働に従事できる人々を示す用語です。
総務省によると2018年時点での全人口に占める生産年齢人口(15歳~64歳)の割合は約60%で、2065年には約51%にまで落ちると予想されています。
労働の担い手である生産年齢人口が減少すると、結果として社会全体で働き手が不足することになります。
出典:厚生労働省「日本人口の推移」
有効求人倍率の上昇
オリンピックに向けた好景気や少子高齢化による人口減少の影響で国内では有効求人倍率が近年まれにみる上昇をみせています。
2008年のリーマンショック以降一時0.5倍以下まで落ち込んだ有効求人倍率ですが、徐々に回復し、最近では毎年約115%ずつ上昇しています。
2018年には有効求人倍率1.63倍を記録し、44年ぶりの高水準となりました。(※2019年 有効平均求人倍率1.60倍)
人手不足倒産企業の増加
少子高齢化の影響は企業経営にも影響を及ぼしているようです。
東京商工リサーチによると、2019年の人手不足関連倒産は前年比10%増の426件で、2018年に引き続き過去最多を更新しました。
これまでは「後継者難」型や幹部社員退職に起因した「従業員退職」型が中心でしたが、最近では「求人難」型が増加しており、人手不足が中小企業の重要課題となっています。
人材紹介ビジネスの近年の市場規模の推移
このような状況の中で、人材紹介ビジネスのマーケットは順調に成長しています。
厚生労働省の調査によると、人材紹介ビジネスの市場規模はここ5年で平均11%ずつ成長しています。
※単位:千円
出典:厚生労働省「職業紹介事業報告の集計結果」
グラフは各年度のデータをもとに船井総研で作成
介護業界の人手不足の現状
多くの業界で人手不足が起こっていることは前節で述べたとおりですが、中でも介護業界の人手不足は深刻です。
介護職の有効求人倍率の上昇
全体的に高い上昇率を見せている有効求人倍率において、介護業界の倍率の高さは他業種と比較しても顕著です。
介護職の有効求人倍率は2010年から上昇を続け、2016年には全職業の有効求人倍率1.36だったのに対して介護分野は二倍以上の3.02を記録しました。
介護の有効求人倍率は都市部で特に高い傾向にあり、2018年の東京では5.40を記録しました。
また、東京商工リサーチは人手不足が原因で倒産する企業が増加傾向にあると発表しています。
このことからも介護業界における人手不足の深刻さが伺えます。
人材紹介事業の仕組み
人材紹介ビジネスのビジネスモデル解説とそれぞれの特徴
本節では人材紹介ビジネスのビジネスモデルを、よく混同されている人材派遣ビジネスと比較して解説していきます。
まず、人材紹介と人材派遣の大きな違いとして、1,業務の目的2,雇用契約3,収益構造が挙げられます。
人材紹介の業務の目的は企業と転職希望者のマッチングにありますが、人材派遣は依頼業務に適した人材の派遣を目的としています。
雇用契約も人材紹介は紹介先企業と労働者間の契約となりますが、人材派遣では派遣会社と労働者間の契約となります。
次に収益構造ですが、人材紹介ビジネスにおける売上は人材紹介の手数料で、基本的には採用決定者の初年度理論年収の20~35%程度です。
一方人材派遣ビジネスの売上は派遣先との間で決められた時間単価×派遣スタッフの実働時間数となります。
人材紹介 | 人材派遣 | |
---|---|---|
業務 | 企業と転職希望者のマッチング | 依頼業務に適した人材の派遣 |
就業期間 | 紹介先企業に準じる | 派遣元企業に準じる |
雇用契約 | 労働者 - 紹介先企業 | 労働者 - 派遣元企業 |
勤務期間 | 長期雇用が前提 | 派遣契約期間の定めによる |
売上 | 労働者の初年度理論年収の20~35%程度(職種による) | 時間単価×実働時間数 |
それぞれの特徴を紹介します。
まず人材紹介ビジネスの大きな特徴として、利益率が非常に高いという特徴があります。
人材を見つける際の原価が低く、また直接雇用契約を結んでいないため研修費や保険料などの費用が発生せず、紹介手数料のかなりの割合が利益となります。
しかし、紹介手数料を成功報酬型で受け取るパターンが多いため、収益の安定性は低いと言われています。
人材派遣ビジネスは単価×実働時間が売上となるため、一般的に収益が安定しやすいと言われています。
しかし、派遣スタッフを自社で雇用しているため、様々な費用が発生し、利益率が低いという特徴もあります。
また、平均派遣期間は4.5カ月と収益期間が短く、収益の安定性という強みにも疑問が残ります。これらの特徴を総合的に判断すると、人材紹介ビジネスのほうが収益性に優れていると言えるでしょう。
人材紹介 | 人材派遣 | |
---|---|---|
利益率 | 〇 | × |
売上の安定 | △ | △ |
介護人材紹介事業のメリット
人材紹介事業において業種特化するメリット
人材紹介企業の中には、特定の業界業種に特化した特化型人材紹介を行っている企業があります。
業種特化することによって、やりたいことが決まっている転職者に選ばれやすくなる、業界が絞られているため営業やブランディングがやりやすくなり紹介斡旋の成功率が上がるといったメリットを得ることができます。
一方デメリットとして、取り扱う業界の幅が狭いため、景気の影響を受けやすくなることが挙げられます。
そのため特化型人材紹介事業を行う際には、長期的に高い採用ニーズが見込まれる業界を選ぶことが重要になってきます。
採用ニーズの見込まれる業界を選ぶことによって特化型人材紹介のデメリットを抑えつつ、メリットを得ることができます。
介護人材紹介に特化するメリット
介護分野は景気による影響を受けにくい業界で、その理由は介護の需要が人口構造と深く結びついていることにあります。
介護の需要はサービスの特性上、常に高齢者層から一定の需要があります。
そのため、景気が悪化したとしても、人口構造に変化がない限りあまり影響を受けないという特徴があります。
現在日本では、少子高齢化により高齢者の割合が高まっているので、介護の需要は非常に安定していると言えます。
景気の影響を受けにくく、安定した需要がある介護業界は、前述の特化型人材紹介のデメリットを回避できるため、特化するには最適の業界といえます。
介護人材紹介事業の将来性と成長性
介護ニーズの高まり
前述した少子高齢化の他にも、介護の需要を後押ししている要因があります。
それが2000年に制定された介護保険制度です。
介護保険制度を利用すれば介護サービスが原則一割の自己負担で受けることができます。
介護保険制度の導入により、多くの人にとって介護サービスを受けやすくなりました。実際に介護保険制度が制定された2000年から2017年の間に各種介護サービスを利用している人は3.3倍に増加しました。
さらに少子高齢化も今後さらに加速すると言われています。
厚生労働省は人口のうちに占める割合の高い第一次ベビーブーム世代が2025年には後期高齢者(75歳以上)に到達し、介護ニーズがさらに高まると予想しています。
転職ニーズの高まり
また、政府が介護人材の処遇改善に積極的に動いており、今後の介護職への転職ニーズの高まりが期待できます。
政府は2019年に公費約1000億円を投じて、介護職従事者の処遇改善に向けて動き出しています。
業界経験が10年を超えるベテランには月額8万円の所得改善を目指しています。こういった政府の取り組みが今後介護への転職ニーズを高めていくことが期待できます。
介護ニーズの高まり × 介護への転職ニーズの高まり という構図の成長市場
これまで見てきたように、介護業界は人口構造の変動により、今後安定した需要増加が見込めます。
また介護の転職ニーズも、介護職の処遇改善がうまくいき、話題になれば増加が期待できます。
これらを鑑みると、介護人材紹介事業は「介護ニーズの高まり×転職ニーズの高まり」という構図の成長市場となります。
人口構造の変化と政府方針といった大きなトレンドの後押しを受けている介護人材紹介市場は今後非常に期待のできるマーケットではないでしょうか。
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