派遣業界の動向から読む、派遣会社の経営ノウハウ

派遣業界の現在の市場規模や今後の動向から、派遣会社の経営ノウハウを解説します。


人材派遣業の概要

人材派遣会社とは、読んで字のごとく人材を派遣する会社です。
より具体的に言えば、特定のスキルを持つ人材を雇用し、その人材を欲しがっている企業に提供する会社です。
正社員やパートと最も異なるのは、「雇用契約を結ぶ会社」と「実際に働く会社」が違うという点です。
正社員やパートであれば、雇用契約を結んだ会社で働き、給料が発生します。


一方で、派遣社員は「派遣会社」と雇用契約を結び、「派遣先企業」に労働を提供します。そのため、業務の指示などは「派遣先企業」から受けますが、給与は「派遣会社」が支払います。


なお、派遣には大きく分けて「一般派遣」、「特定派遣」※1、「紹介予定派遣」の3つに分けられます。

一般派遣(登録型派遣)

➢ 派遣の仕事を希望する人材を人材派遣会社に登録し、希望や条件に合う派遣先企業との派遣契約が結ばれた時に、派遣社員として雇用契約を結びます。

特定派遣

➢ 派遣会社と派遣社員が正社員同様(無期限)の雇用契約を結んでおり、必要に応じて派遣先企業に派遣されますが、派遣契約終了後も派遣会社での業務が継続します。システムエンジニアなどの一定のスキルが必要な業種に多いです。

紹介予定派遣

➢ 派遣社員が派遣先企業と直接契約(正社員・契約社員)を結ぶことを前提に、一定期間(6ヶ月まで)の人材派遣を行うシステムです。

※1 H27年の派遣法改正により、一般派遣と特定派遣の法的な区分はなくなり、すべて許可制になりました。
(旧)一般派遣:厚生労働大臣の許可が必要
(旧)特定派遣:厚生労働大臣の「届出が必要」→「許可が必要」に改正

人材派遣業の市場規模【2017年2月時点】

※記事作成時点(2017年2月現在)で判明、確定している資料に基づきます。
人材サービス産業全体の市場規模は、およそ8兆円です。
これは、近年伸びてきている介護や損害保険などと匹敵する規模ですから、かなり大きい市場であるということができます。

では、人材サービスの個々の市場規模を見てみましょう。
・人材派遣
➢ 5.4兆円
・請負
➢ 1.5兆円
・求人広告
➢ 1兆円
・職業紹介
➢ 3000億円

最も大きいのは人材派遣の市場である一方で、職業紹介が最も小さい市場であることがわかります。

市場規模の推移

(参考:労働者派遣事業報告書―厚生労働省)

上のグラフは、人材派遣業の平成20年から平成26年までの売上高の推移です。
平成20年のリーマンショックに大きな打撃を受けた人材派遣業の市場規模は下降傾向でしたが、平成26年には上昇に転じています。平成27年、28年も上昇傾向が続くと見られていますが、若干ながらも上向きになってきた景気に伴い、主にサービス産業での人材の需要が高まってきたことが、過去3年の上昇傾向の理由の1つになりそうです。

では、今度は取扱求人数ベースで市場規模を見てみましょう。
・人材派遣
➢ 83万件
・請負
➢ 3.2万件
・求人広告
➢ 545万件
・職業紹介
➢ 344万件

取扱求人数では、人材派遣は職業紹介よりもだいぶ少ないことがわかります。理由としては、以下のような職業紹介ならではの利用者のメリットによるものだと考えられます。

職業紹介会社を利用するメリット(利用者視点)

・就業中でも登録しておけば転職活動が容易
・スキルやキャリアといった適正に最適な会社を紹介してもらえる
・選考時フォローが得られる

以上のように、「手軽に転職活動ができる」というのが利用者にとっての最大のメリットです。このようなメリットは、「とりあえず登録」という行動を起こさせるため、結果的に取扱求人数が増えることになります。

求人広告に関しては、幅広く情報を伝達し、一定の期間中に集客できるという点で最も手軽にできる手法のひとつであり、また最も一般的な手法のひとつでもありますから、飛び抜けて件数が多いのも納得です。

人材派遣については、派遣社員が稼働しない限りコストがかかる一方なので、収益を出せる程度に稼働率を上げる必要があるため、必然的に取扱求人数が伸びにくい特徴があります。
そんな人材派遣ですが、利用者側のメリットはどのようなものなのでしょうか。

人材派遣を利用するメリット(利用者視点)

・期間や時間を選べる(長時間労働がない)
・好きな職種や職場を選べる
・パートやアルバイトよりも給料水準が高い(保険に加入できる)
・直接雇用の可能性がある

以上のように、人材派遣会社を利用するメリットは多いです。
また、近年の労働環境の変遷(詳しくは後述します)から、人材派遣への注目が高まっています。

人材派遣業の課題と動向

人材派遣業は、人材サービス業界の稼ぎ頭であり、今後も市場の拡大が予想されますが、将来的にはどうなっていくのでしょうか。

雇用構造の変化

女性雇用者がかなり増えてきている今、働き方もかなり変わってきています。
特に、「ワークライフバランス」が重視される昨今、正社員よりも「自由に」、「気ままに」働きたいという願望に答えるのが、「人材派遣」という業態といえます。

人材派遣に期待されるのは、特に「女性の社会進出」ですから、かなり社会貢献度の高い業態ということもできます。

更に、超高齢化社会が目前に迫っていることから、高齢者も徐々に労働市場へ参入してくることが予想されます。

この問題は、求職者のキャリアプランのサポート、キャリアチェンジの支援、中高年層の活用などの必要性を示唆しています。

「中高年層の活用」「キャリアチェンジの支援」では、一般的な派遣の形態と並行して「紹介予定派遣」への期待も高まります。

サービス経済化

2020年にかけて、サービス職は105万人、専門技術職は43万人増加し、運輸通信職は323万人減少するといわれています。
このような職種間の就業者の移動は、働き手にとっては容易なことではありません。特に中途採用では即戦力が求められますが、自分の経験上にやったことのある職種や業種への移動は困難になってくるでしょう。
表面上は関係のない職種や業種でも、求職者ひとりひとりの適性やスキルを異業種に活かすサポートの必要性が示唆されています。
ここで、キャリアコンサルタント(人材コーディネーター)の出番になります。
人材派遣においては、一般派遣や特定派遣のほか、紹介予定派遣といった形態も織り交ぜながら、求職者にとって最善のキャリアチェンジをサポートすることが期待されます。

派遣会社の経営ノウハウ3選

以上を踏まえたうえで、派遣会社の運営ノウハウについて解説していきます。

1. 「問題や課題」をビジネスチャンスに

高齢化社会に伴う高齢者の労働市場の参入、女性の労働市場の参入については先述しましたが、これら以外にも問題や課題は山積しています。

新卒者や若手社員の雇用と早期離職

➢ 近年は「新卒社員の離職率」が問題視されています。大卒新卒の3年以内の離職率は、3割にのぼります。職を無くした若手社員と、若手社員を失った企業のフォローが、人材サービス会社のなすべき責務であるといえます。

ニート、フリーター

➢ 最近は耳に馴染んできてしまった「ニート」や「フリーター」ですが、彼らに主体的に職業を提供できるのは人材サービス会社だけでしょう。

過労死問題、有給休暇未消化問題

➢ いわゆる「ブラック企業」に勤める若手社員が過労死してしまう事件が問題となっています。政府もこの問題に対処しようとしていますが、スピード感を持った画期的な解決には至らないかもしれません。人材サービス会社の役割としては、多忙を極める一般社員に有給休暇を取得させる支援があげられます。

障がい者の就職支援

➢ 近年では、積極的に障がい者を雇用していこうという働きが一部の企業で盛んになってきています。しかし、彼らだけではまだまだ不十分です。人材サービス会社には、この流れを更に加速させることが期待されます

以上にあげただけでも、多くの社会問題があるなかで人材サービス会社が取り組める事案の多さがお分かりいただけたのではないでしょうか。
重要なのは、こういった問題や課題を傍観するのではなく、ビジネスチャンスと捉えることです。

2. 「信頼」こそすべて

いくら画期的な、完璧なビジネスモデルを構築して実行したところで、利害関係者の信頼を得ることができなければその事業を成功させることは叶いません。利害関係者とは、すなわち社会のことです。
では、どのようにすれば信頼を得られるのでしょうか。
インターネットが普及した現在、ちょっとした不祥事ですぐに炎上し、そのマイナスイメージは加速度的に全国へ広まります。そういったマイナスイメージは人の記憶に残りやすく、簡単には払拭することができません。
不祥事というのは、経営者や社員の気の緩みから生じます。気の緩みの原因はいろいろありますが、その最たるものに「理念の形骸化」があげられるのではないでしょうか。
人材サービス業というのは、まず「労働者のため」、そして「企業のため」の事業であるべきで、これが理念です。この理念を忘れ、目先の利益をあげることだけが目的となってしまったら、それは社会的に受け入れられず、瞬く間に信用を失っていくでしょう。
重要なのは、いかに「理念」を守り、売上をあげて、信頼を勝ち取るかです。

3. 「人」を理解する

最も根本的なことですが、「人」を理解できずして企業を運営することは不可能です。
特に人材サービス会社は、商品自体も「人」ですから、商品価値を育てる=人を育てることに他ならないのです。
人を育てる、というのはどういうことでしょう。手取り足取り懇切丁寧に教えることでしょうか。
これを「ティーチング型」のマネジメントだとすれば、現代社会に求められているのは「コーチング型」のマネジメントであるということができます。
コーチングとは、「教える」のではなく「導く」ことです。その人の「信頼」を勝ち取り情報を引き出し、その人の「問題や課題」を「強み」に転化し、あとは本人の行こうとする場所へ導く、これがコーチング型のマネジメントです。
働く意欲がわかない、どの会社に就職・転職したいかわからない、勤めているものの能率が上がらない…このような悩みを抱えた人、企業はかなり多いです。これらの悩みの根底には「受動的にしか行動できない」という特性が隠れているのです。
こういった「受動的な人」にいくら高度なテクニックを教え込んで、多くの企業に紹介・派遣したところで、根本的な問題の解決には至りません。
ゆえに、人材サービス会社がこういった問題に切り込んでいくために必要なのが、その人を能動的に動かすコーチング型のマネジメントなのです。

統括

今回はノウハウについて解説しましたが、ノウハウを見聞きしたからすぐに実行できる、というものでもありません。また、人材派遣業を行う上でこのノウハウを実践する場合には、その大前提として「人材派遣業とは何か、何のための事業なのか」という深い理解が必要になってきます。ぜひ、これまでの記事を再読いただいたり、関連書籍などをお読みいただき、理解を深めていただければと思います。

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参考サイト

平成26年度 労働者派遣事業報告書の集計結果 |報道発表資料|厚生労働省

リクルートワークス研究所 | Works Institute‐2020年の「働く」を展望する 成熟期のパラダイムシフト

株式会社矢野経済研究所―人材ビジネス市場に関する調査を実施

一般社団法人 日本生産技能労務教会-2020年の労働市場と人材サービス産業の役割

新規学卒者の離職状況 |厚生労働省

子供・若者白書(旧青少年白書)について – 内閣府

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