【働き方改革:同一労働同一賃金】2020年4月より施行!中小企業の対策法とは?

2020年4月の改正法施行に伴い、企業には同一労働同一賃金実現のための対応が求められます。本記事では、同一労働同一賃金とは何なのか、法律の変更点・注意点、企業としての対応手順をわかりやすく解説します。

 

 

「同一労働同一賃金」とは?改正背景と目的を知っておきましょう!

 

 

「同一労働同一賃金」という概念は最初に2018年12月に厚生労働省が発表された「同一労働同一賃金ガイドライン」中に、非正規雇用の処遇の改善は重要なテーマとして現れた。言葉の定義については、

“同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。”

 

これまでの日本企業文化においては、正規雇用者と非正規雇用者の身分による待遇や賃金格差は当たり前とされてきました。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2019年)」によると、男女計では、正社員・正職員の平均賃金(1時間あたり)は3,254円です。それに対し、正社員・正職員以外は2,113円と大きな開きがあります。

 

 

【出所】厚生労働省 賃金構造基本統計調査(2019年)

 

 

しかし、深刻化する人手不足を背景に、企業は働き方の多様性と人材の確保を実現するために、同一労働同一賃金の導入が急務とされました。また、ガイドラインでは法的な拘束力はなく、違反しても特に罰則はありませんので、2020年4月に改正案施行が実行されました。

 

改正ポイントと企業に与える影響

 

同一労働同一賃金の主な対象は、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者(協定対象派遣労働者を含む)です。大企業はこの4月から、中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は、2021年4月1日からです。

 

今回の法改正ポイントは以下の3点です。

 

 

①不合理な待遇差の解消

具体的には、均衡待遇規定について、個々の待遇ごとに、待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断することが明確化。[1]

また、派遣労働者について、「派遣先均等・均衡方式」、「労使協定方式」のいずれかの方法によって派遣社員の賃金を確保することが義務化されます。[2]

 

②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

パートタイム労働者や有期雇用労働者、派遣労働者に対する待遇に関する説明義務を創設。[3]

 

③行政による解決手段手続(行政ADR)の整備

行政による事業主への助言・指導等および裁判外紛争解決手続(ADR)が整備されます。[4]

 

 

「同一労働同一賃金」の導入は、企業に与える影響は多岐にわたります。ここで、企業側にとってのメリットとデメリットを紹介します。まず、企業から見た3つのメリットを挙げます。

 

 

  • 生産性の向上

正規と非正規の賃金格差がなくなることにより、非正規雇用の社員のモチベーションアップにつながります。意欲を持って働くことで、業務の効率性や生産性が向上し、業績アップにも寄与する。

 

  • 人材確保ができる

労使双方にとって望ましい多様な働き方を自由に選択できるようになることから、仕事の幅が広がり人材を確保しやすくなるなどの効果が期待できます。

 

  • 能力・スキルの開発

非正規雇用労働者の教育訓練の機会が増加することにより、非正規雇用の社員の知識やスキルを高め、潜在的な能力を引き出す可能性も広がります。

 

 

次は、企業側にとってのデメリットを解説します。

 

 

  • 人件費の増加が懸念される

非正規雇用労働者の賃金をあげた場合、人件費が上がると懸念される。特に、非正規雇労働者の比率が多い企業は、人件費増加を避けるために新たな投資や他への投資を抑制し、正社員の待遇を引き下げることがないように、留意しなければなりません。

 

  • 待遇格差への説明責任

同一労働同一賃金の導入は、正社員との間の待遇差の内容・理由等を説明する義務があります。立証ができなかったり、十分な説明ができなかったりした場合には、訴訟を起こされるリスクが生じます[5]

 

 

要チェック!「合理・不合理」を判断する線引き

 

「どこまでが合理的・不合理な格差」「どこまでを同一労働かという線引きの判断が難しい」という悩みを抱えている経営者が多いのでしょう。そのため、ここで「同一労働同一賃金ガイドライン」をもとに合理性の基準を解説します。

 

まず、「基本給」に関して、個々の労働者の能力または経験、業績または成果、勤続年数に応じるなど、などさまざまな要素を考慮したうえで、これらを基本給に反映させている場合、正社員の反映基準と同一の額にて支給(昇給)する。

 

次に、「賞与」では、会社の業績などへの貢献に応じて賞与を決定している場合は、同一貢献をする正社員と非正規社員には同一の賞与を支給する。また、一定の相違がある場合にはその相違に応じた賞与を支給する。

 

さらに、「各種手当」[6]について、正社員と同一の支給要件を満たす場合は、正社員と同一の手当を支給しなければならないとする。

 

最後、「福利厚生」に関して、同一の事業所で働いている場合、正社員と同一の福利厚生施設(飲食施設・休憩室・更衣室)の利用を認めなければならないとされている。加えて「教育訓練」に関して、正社員と同一の職務内容であれば同一の教育訓練を実施します。

 

導入に向けて中小企業がとるべき対応とは?

 

同一労働同一賃金の導入には、一番重要なのは待遇に関する説明義務の履行です。ですので、企業に対して、以下の4点ポイントをしっかりと押さえ、準備をしていきましょう。

 

  • 自社全従業員の雇用形態をチェック

まずは自社の労働者の雇用形態(正社員・有期雇用労働者・パートタイム労働者など)につき早急に確認しておきましょう。法的対象となる労働者を雇用している場合は、待遇差の確認のステップへ。

 

  • 個々労働者の待遇の状況を確認する

現状の非正規社員を短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者ごとに区分し、待遇について正社員との違いがあるか否かの確認を行います。自社の不合理な待遇差を洗い出すことで、状況がより把握しやすくなります。

 

  • 待遇差があれば理由を明確化する

まずは雇用形態に応じての待遇差が「不合理ではない」といえるか否かを確認する。「合理的」と確認したら、非正規社員から説明を求められた場合、労働者が納得できる合理的な説明ができるよう、待遇格差を設けている理由を明確化しておくことが重要です。

 

  • 公正で明確な制度への再構築

もし非正規社員に対して説明できない不合理な待遇差があり、職務の区分や評価基準があいまいな場合は、公正で明確な就業規則を整えましょう。その際、自社の方針を踏まえて、労使双方が意見を交換できる場を設け、双方が納得できる形で待遇差が解消できるよう整備しておきましょう。

 

 

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参考サイト

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/index.html

厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査

https://www.mhlw.go.jp/content/000468444.pdf

厚生労働省 パートタイム・有期雇用労働法対応のための取り組み

 

[1] パートタイム・有期雇用労働法8条。個々の待遇とは、基本給、賞与、各種手当、福利厚生など。

[2] 労働者派遣法30条の3、30条の4。

[3] パートタイム・有期雇用労働法14条②、労働者派遣法31条の2④。

[4] パートタイム・有期雇用労働法18、24、25、26条。

[5] 企業が同一労働同一賃金のルールに違反しても法的な罰則はないが、非正社員から損賠賠償を請求される可能性がある。

[6] 精皆勤手当、時間外労働の手当、住宅手当、通勤手当、出張旅費、家族手当など。

 

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