本記事では、人材ビジネス業界の動向や経営を取り巻く環境等について解説しています。そして人材ビジネス業界の経営者がこれから取るべき事業戦略について分かりやすく解説しています。
人材ビジネス事業者を取り巻く事業環境
まずは、業界理解を深めるために、現状を説明します。
厚生労働省の調べるによると2020年2月時点での有効求人倍率は1.45倍となり、先月を0.04ポイント下回り、
3月時点では1.39倍と、2月時点から更に0.06ポイント悪化しました。
【出所】厚生労働省[一般職業紹介状況(令和2年2月分)]
また、雇用形態では、正社員全体は3494万人と、前年度(2018年)と比べて18万人の増加となった。一方で、パート・アルバイト・契約社員・嘱託社員・派遣社員といった非正規の職業・従業員数は2165万人と、前年度より45万人増加しています。
- 【出所】総務省統計局「労働力調査2019平均結果」にもとに船井総合研究所が作成
人材ビジネス業界の抱えている課題
人材ビジネス業界の代表的な事業形態は、大きく3つの分野に区分されています:職業紹介事業、労働派遣事業、求人広告事業。人材需要の高まりが続く一方、少子高齢化による労働人口減少の問題もあり、同業競争の激化も見込みされています。
平成30年度人材業界の市場規模は以下となります。
事業形態 | 事業所数 | 年間取扱人数 | 市場規模 |
職業紹介(注1) | 24,059事業所
(対前年+10%) |
約765万件
(対前年+6.6%) |
約5,418億円
(対前年度比:+21.9%) |
労働派遣(注2) | 38,128事業所
(対前年―38.9%) |
約69万件
(対前年―2.5%) |
6兆3,816億円
(対前年度比:―1.8%) |
求人広告(注3) |
― |
1767万9752件
(対前年+22.4%) ※広告掲載件数 |
9,528 億円
(対前年+11.7%) |
- 厚生労働省「平成30年度職業紹介事業報告書」
- 厚生労働省「平成30年度労働者派遣事業報告書」
- 全国求人情報協会「求⼈情報提供サービス市場規模調査結果および求⼈広告掲載件数等集計結果」
- をもとに船井総合研究所にて作成
その中で、労働派遣事業数の減少は2015年の「労働者派遣法」の改正により、特定労働者派遣事業が3年間の経過措置の後廃止されることとなったため、事業所数が38.9%減少した影響によるものです。
次に、人材業界が直面する2つの課題について簡単にご説明いたします。
就業者の年齢構成の変化
内閣府の最新版「高齢社会白書」によって、今後、日本の人口は約9,700万人まで減少すると予測されています。その中、高齢者比率が増加し、2035年には3人に1人が高齢者(65歳以上)となります。先々高齢化が進むと、少子化の問題も加わり生産年齢人口が減っていくことで、企業の生産性を下げてしまう恐れがあります。
ですので、現在の雇用環境下、若年人材の採用難に悩む中小企業は目をつけるのは、豊かな長年の経験によって培われた熟練技能を持つシニア世代就業者です。即戦力となる人材を紹介するため、再就職支援サービスを提供する人材会社の役割にも期待されます。
経済化による産業構造の変化
今後、サービス経済化がさらに進むと見られます。情報革命によって、「情報通信業」等のIT業界はさらなる市場規模の拡大が見込まれています。また、少子高齢化の影響による「医療・福祉業」も発展の急成長を遂げている。
産業構造の変化に伴い、職種構造も変わります。需要が高まり続ける介護業界はもちろん、高い知識・技術が要求される IT・通信系の求人も増えてきています。
人材業界にまつわる最新トレンドをご紹介!
企業経営者は常に様々な経営判断を求められます。その際、より正確かつ迅速な対応をとるため、制度・対策の最新動向を把握し、その情報を基に的確な事業戦略を取り組むことが大切です。そこで、人材業界の最新動向を紹介します。
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「同一労働同一賃金」
2020年4月から改正労働者派遣法の施行により「同一労働同一賃金」が導入されます。「同一労働同一賃金」とは、派遣社員と正社員は同じ仕事に就いている限り、同じの賃金を貰うという考え方です。これは働き方改革の一環として、不合理な待遇差をなくすことを大きな目的にしています。その中、賃金の決め方による「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2種類があります。
派遣先均等・均衡方式では、派遣元企業は派遣先企業が提供される情報を基に、派遣社員の賃金を決定する。
労使協定方式では、過半数労働組合または過半数代表者と派遣元事業主で結ばれた労使協定に基づいて、待遇が決定する方法です。
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雇用調整助成金
新型コロナウィルスの感染拡大の影響に伴い、派遣社員は派遣切りに遭う可能性が懸念されています。政府は、派遣労働者の雇用関係の維持するため、中小企業の経営者向けに「雇用調整助成金」は支給されます。これは、コロナの原因で実際に休業をさせているのであれば、派遣元は雇用調整助成金を申請することが可能です。雇用調整助成金は、やむを得ず従業員を休業させるための活用が期待されます。
政府の更なる追加支援を期待したいところです。新たな情報が入り次第、皆さまにもお伝えします。
景気不況を乗り切るために実践すべきこととは?
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「地域特化型」の人材紹介
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中小企業の求人広告は求職者の目に留まらないです。なぜなら求職者は安定性を求め、大企業や知名度の高い企業の方に人気が集まります。ですので、大手企業が比較的弱い地方の市場を狙って、その地域におけるネットワークを活用することで、自社にしかない強みや魅力をそのエリアで働く事を望む求職者に発信することができます。
特に、コロナの影響で景気不況の中、「地域特化型」人材紹介はその特定の地域に依存することで、大都会により景気の影響を及ぼすのは難しいと思います。
Web広告媒体の活用×自社採用強化
まずは、自社の採用サイトをつくりましょう。自社の求人広告をindeedに掲載されることで、Googleに検索する際に自社の求人情報は他の検索エンジンより上位に表示されます。また、ソーシャルメディアでの広告の併用も勧めます。SNSを活用して企業自らが採用活動を行えば、自社の募集コストの削減し、若者を中心としたアプローチすることができます。
そして、企業が自ら能動的な採用戦略を実践する必要があります。自社採用サイトの強化により、採用したい人物像(=ペルソナ)を明確化でき、企業理念や企業の魅力を最大限にアピールすることができます。また、企業が攻めの姿勢を行う際には、しっかりとKPIを設定しておくことでより効率的な採用活動を行えます。
人材業界は、景気・市場の動きとともに法律やビジネスモデルが変わる業界なので、経営者の皆様は常に最新の情報を入手できるような経路を確保しておくため、人材募集力の強化・採用力アップを目的している「人材ビジネス経営研究会」にぜひご参加ください。
⇒https://lpsec.funaisoken.co.jp/study/jinzai-business/100566/
また船井総研人材ビジネス支援部では、人材ビジネス経営に関する個別経営相談を「無料」で受付しております。少しでも経営のお悩みがある方は、こちらもこの機会にご覧の上、お申込みくださいませ。
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参考サイト
① http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/index.html
総務省統計局 労働力調査
② https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000088382_00006.html
新型コロナウイルス感染症に伴う労働者派遣に関するQ&A
③ https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/01pdf_index.html
内閣府 令和元年版高齢社会白書(全体版)
④https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html
厚生労働省 派遣労働者の同一労働同一賃金について