【2017年最新版】女性の労働問題にまつわる法律をやさしく解説Part1【男女雇用機会均等法】

女性の労働者が抱える問題と、対応した法律(男女雇用機会均等法・育児休業法・パートタイム労働法)
について分かりやすく解説します。
本記事では、男女雇用機会均等法について解説します。

日本が抱える労働市場の問題

昨今の日本(2017年3月現在)では、低調だった景気も徐々に上向きになり、忙しく仕事が舞い込んできて「嬉しい悲鳴」を上げている企業も多いのではないでしょうか。

しかしその一方で、増える仕事に生産力が追い付かず、現場ではまさに「悲鳴」があがっている状況が散見されます。
業務量過多による長時間労働や過労死などの問題は社会問題となっており、早急に解決しなければならない問題です。

またその一方で、少子高齢化問題も密接にかかわっています。
労働力の著しい減少が危惧されるなか、日本は新たな労働市場を開拓する必要に迫られています。
そして、その新たな労働市場というのが、「女性労働者」であるのはいうまでもありません。

しかし、この「女性労働者」が抱える問題はかなり深刻なものなのです。

総務省統計局の「労働力調査」では、非正規雇用の労働者の男女年齢別の内訳が示されています。

出典(「労働力調査結果」(総務省統計局))

この図で見ても分かるように、女性が占める非正規雇用の割合がかなり大きいことがわかります。また年齢別に見ても、男性に比べて女性の方が働き盛りに非正規雇用として就労していることもわかります。

しかし、単に非正規雇用だから問題というわけではありません。非正規雇用の労働者(特に派遣社員)は、正規雇用の労働者よりもワークライフバランスがとりやすいなどのメリットが“本来”存在するからです。

一概に、労働時間が短ければそれだけ収入も減ります。
非正規雇用の労働者というのは、「収入の少なさ」というデメリットと引き換えに「自分の時間」を得ているといっても過言ではありません。

ここで浮かび上がる問題というのが、「非正規雇用の労働者の貧困」です。
こう言うと「それは非正規雇用を選んだ人の自己責任ではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
無論、自分の意志でいわゆる「ニート」や「フリーター」として生活している人に対してはその理屈が通用するかもしれませんが、注目すべきなのは「シングルマザー」として働いている女性の貧困なのです。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、片方の親と同居する子供の貧困率はなんと50%を超えています。
日本においては、離婚などで親権を得るのは女性というのが社会通念上通常であるので、この子供の貧困は「シングルマザーの貧困」と言い換えてしまっても差し支えないでしょう。

では、実際にはどのくらいの収入を得ているのでしょうか。
こちらも総務省統計局の調査を引用すると(下図)、非正規雇用の女性のうち8割が年収200万円以下であり、100万円以下の割合も5割近くになっています。

一方で、シングルマザーの女性が皆非正規雇用というわけではありません。
正規雇用シングルマザーの女性も一定数存在するはずです。

しかし、正規雇用の女性であっても年収300万円以下が5割近くを占めており、こちらでも女性の貧困が垣間見えています。
これは、「女性の管理職登用」の問題が関係しています。
2013年の総務省の調査によると、管理的職業従事者に占める女性の割合は11.2%であり、諸外国と比べてかなり低い水準となっています。これは是正していかなければならない問題ではありますが、その一方で「管理職になりたがらない女性」というのも一定数存在する現実があります。
というのも、現状の管理職にはワークライフバランスという概念が薄く、出産や子育て中の女性にとっては働きづらいという実情があるからです。
事実、女性管理職は男性管理職と比較して、未婚率や既婚者で子供がいない率が高くなっています。これは、管理職には男性と同じような働き方(=時間的に長く働けること)が求められていることの証左であるともいえるでしょう。

ここまでの話をまとめると、
・非正規雇用の女性は収入が少ない
・シングルマザーの女性は収入が少ない
・正規雇用の女性でも子供がいないか、未婚女性でない限り管理職の道は狭く、収入が増えにくい

ということがわかります。
女性労働者に対する保護策をなにも講じなければ、女性が働きたいと思っても働けないか、働くために出産や育児を避けることが起きてきます。
これでは、今の日本が抱える労働力不足と少子高齢化問題を解決できないばかりか、さらに悪化させることになってしまいます。

この深刻な状況を脱するためには、政府の働きかけに任せているばかりでなく、民間企業の経営者やそこで働く労働者の双方がこの問題と対面し、対処していくその姿勢が重要です。
そのためにも、まず現時点で政府から示されている対策案、つまり法律を理解し、実践していくことが求められるのです。

経営者が理解すべき労働者のための法律

2017年3月現在、こういった女性労働者の権利を守るための法律は以下があげられます。
・男女雇用機会均等法 ←本記事をご覧ください。
・育児休業法 ←「【2017年最新版】女性の労働問題にまつわる法律をやさしく解説Part2【育児休業法】」をご覧ください。
・パートタイム労働法 ←「【2017年最新版】女性の労働問題にまつわる法律をやさしく解説Part3【パートタイム労働法】」をご覧ください。
・労働基準法
詳しくは「【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説Part1【総則・労働契約】」の連載記事をご覧ください
・労働者派遣法
詳しくは「【2017最新版】労働者派遣法徹底解説」をご覧ください。
・労働契約法
詳しくは「【2017年最新版】労働契約法ピンポイント解説【就業規則・労働条件】」をご覧ください。
・女性活躍推進法
詳しくは「女性活躍推進法の概要と今後~1番得をするのは派遣社員?~」をご覧ください。

以下では、「男女雇用機会均等法」「育児休業法」「パートタイム労働法」それぞれの法律について重要な条文をピックアップし、解説していきます。

※本記事では「男女雇用機会均等法」について紹介しています。「パートタイム労働法」や「育児休業法」については上記のリンクよりご覧下さい。

男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法(以後、均等法)では、憲法14条(法の下の平等)に則り、男女の雇用期間や待遇の均等を図り、また女性労働者の産前産後の健康の確保を図る措置を推進する目的があります。

特に重要な条文として、まずは第5条(性別を理由とする差別の禁止)を見てみましょう。

事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

この条文では、端的に労働者の募集及び採用に係る性別を理由とする差別を禁止するものです。(直接差別)

一方、第7条(性別以外の事由を要件とする措置)も注視すべき条文です。

事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。

つまり、業務上の必要性など、合理的な理由がない場合に、募集・採用において労働者の身長・体重・体力を要件とすること、労働者の募集・採用、昇進、職種の変更をする際に、転居を伴う転勤に応じることを要件とすることを、間接差別として禁止しています。

差別とは、不利に扱うこともさることながら、有利に扱うことも差別に含まれ、禁止されています。
しかし、これらの条文だけでは男女の区別なく募集。採用しなければならないというだけで、“たまたま”女性労働者の採用数が少なくなってしまった、といった形で実質的な均等が図られていないといったように、条文自体が有名無実化してしまう可能性があります。

そこで、第8条(女性労働者に係る措置に関する特例)で対策が講じられています。

前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。

いわゆる「ポジティブアクション(積極的格差是正措置)」と呼ばれる救済措置、つまり女性が差別を受けている現状を是正するためにあえて女性に有利に取り扱うことを認める条文です。
男性目線から見るといわゆる「逆差別」に映るので賛否両論はありますが、このようにして女性労働者の保護を図ろうというのが、均等法の基本的な立ち位置です。

そして、第9条(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)では、以下のように定められています。

事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2  事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3  事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 の規定による休業を請求し、又は同項 若しくは同条第二項 の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4  妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

この条文では女性の婚姻、妊娠、出産を理由に、女性に不利益な取り扱い(退職理由として予定する、解雇する)をすることを禁じています。
妊娠・出産等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと解されます。
また、妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は無効となります。

もうひとつ重要な条文をあげるとすれば、第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)、つまりセクシュアルハラスメント(以後、セクハラ)に対する条文になります。

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2  厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
3  第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。

この条文では、セクハラによって不利益を被ったり、就業環境が害されることについて、事業主に対し、防止のために雇用管理上必要な措置をしなければならないとしています。
また、セクハラは異性に対してのみならず、同性に対するものも含まれます。

これらの条文からなる均等法ですが、もし違反した場合はどうなるのでしょうか。
第33条(罰則)では次のように定められています。

第二十九条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

次いで第29条(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)では次のように定められています。

厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
2  前項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。

厚生労働大臣により、この法律の違反の可能性がある事業主に対して報告を求めることができますが(第29条)、この報告に応じない、あるいは虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料に処されます。

<コラム>罰金と科料、過料の違いについて
 ・罰金:1万円以上の刑法及び刑事訴訟法における刑罰(前科がつきます)
 ・科料:千円以上1万円未満の刑法及び刑事訴訟法における刑罰(前科はつきません)
 ・過料:行政法規違反に対する非訟事件手続法による金銭制裁(前科はつきません)
上から順に罪の重さを示しているといってもよいです。過料の場合、罰金や科料と違い刑法や刑事訴訟法による刑罰ではありません。

では、厚生労働省に特に報告を求められておらず、一方でこの法律に違反している企業はどうなるのでしょうか。第30条(公表)を見てみましょう。

厚生労働大臣は、第五条から第七条まで、第九条第一項から第三項まで、第十一条第一項、第十一条の二第一項、第十二条及び第十三条第一項の規定に違反している事業主に対し、前条第一項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。

第29条における「勧告」を受けたのにもかかわらず、改善がみられない場合は、厚生労働大臣によってその会社名などが公表される可能性があります。
こちらも特に刑罰に処されるというわけではありませんが、社会的制裁という面ではかなり重いものになりえます。

総括

本記事では、男女雇用機会均等法について解説しました。次の記事では、「育児休業法」について解説していきます。

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参考サイト

統計局ホームページ/労働力調査(詳細集計) 平成28年(2016年)平均(速報)結果

2016年版働く女性と労働法 | 労働関連資料・パンフレットダウンロード | TOKYOはたらくネット

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則

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