目次
労働基準法とは?
労働基準法は、憲法25条と27条に基づき、労働者の権利を守るために制定された法律です。(第1条)
労働者と使用者(企業)は対等な立場であり、お互いに就業規則や労働契約を守る義務があります。(第2条)
労働基準法における労働者とは、職業の種類を問わず、事業(事務)所に使用され、賃金を支払われる者をいいます。(第9条)
労働基準法における賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他の名称の如何を問わず、労働の対象として使用者(企業)が労働者に支払うすべてのものを指します。(第11条)
労働基準法の基本は以上の条文になります。以下では、第56条~第68条を解説していきます。
なお、労働基準法の条文全体における本記事の位置づけは以下のようになっています。
第一章 総則
第二章 労働契約
第三章 賃金
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
第五章 安全及び衛生
第六章 年少者
第六章の二 妊産婦等
第七章 技能者の養成
第八章 災害補償
第九章 就業規則
第十章 寄宿舎
第十一章 監督機関
第十二章 雑則
第十三章 罰則
附則
第56条 最低年齢
○2 前項の規定にかかわらず、別表第一第一号から第五号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十三歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満十三歳に満たない児童についても、同様とする。
児童(満15歳に達してから最初の3月31日までの者)を労働者として使用することは禁止されています。
一方で、有害でなく軽微な職業(非工業的業種)であれば満13歳以上、映画製作や演劇の事業では満13歳未満の児童も、行政官庁(労働基準監督署長)の許可を得れば、修学時間外に使用することができます。
第61条 深夜業
○2 厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、前項の時刻を、地域又は期間を限つて、午後十一時及び午前六時とすることができる。
○3 交替制によつて労働させる事業については、行政官庁の許可を受けて、第一項の規定にかかわらず午後十時三十分まで労働させ、又は前項の規定にかかわらず午前五時三十分から労働させることができる。
○4 前三項の規定は、第三十三条第一項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させる場合又は別表第一第六号、第七号若しくは第十三号に掲げる事業若しくは電話交換の業務については、適用しない。
○5 第一項及び第二項の時刻は、第五十六条第二項の規定によつて使用する児童については、第一項の時刻は、午後八時及び午前五時とし、第二項の時刻は、午後九時及び午前六時とする。
18歳未満の者は、原則として深夜時間(22時~5時)に使用してはいけません。
なお、厚生労働者が必要と認める地域や期間においては、23時~6時までが深夜時間となります。
また、災害時や農林水産業、保健衛生業、電話交換の業務については、深夜労働の制限は適用されません。
第62条 第64条の3 危険有害業務の就業制限
○2 使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
○3 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
○2 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。
○3 前二項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める。
使用者は、年少者(満18歳未満の者) を以下の危険な業務で使用してはいけません。
運転中の機械・動力伝動装置の危険な部分の掃除・注油・検査・修繕
運転中の機械・動力伝動装置へのベルト・ロープの取付け・取外し
動力によるクレーンの運転
その他厚生労働省令で定める危険な業務(年少者労働基準規則第8条)
以下の重量物を取り扱う業務
毒劇薬、毒劇物その他有害な原材料または爆発性・発火性・引火性の原材料を取り扱う業務
有毒ガス・有害放射線を飛散する場所における業務
高温・高圧の場所における業務
その他安全・衛生・福祉に有害な場所における業務
また、妊産婦(妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性)に関しても、上記の業務に加え「女性労働基準規則第2条」に定める業務に就かせてはいけません。
なお、「女性労働基準規則第2条」に定める業務は以下の通りです。
下欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務
ボイラーの取り扱いの業務
その他、主に土木業において危険な業務
第63条・第64条の2 坑内労働の禁止・坑内業務の就業制限
使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。
一 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後一年を経過しない女性 坑内で行われるすべての業務
二 前号に掲げる女性以外の満十八歳以上の女性 坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの
使用者は、年少者(満18歳未満の者)を坑内で労働させてはいけません。
また、妊娠中の女性と、坑内業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性を、坑内で行われるすべての業務に使用してはいけません。
また、「女性労働基準規則第1条」に定める業務を満18歳以上の女性労働者に行わせてはいけません。
なお、「女性労働基準規則第1条」に定める業務とは以下の通りです。
・人力により行われる土石、岩石若しくは鉱物(以下「鉱物等」という。)の掘削又は掘採の業務
・動力により行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務(遠隔操作により行うものを除く。)
・発破による鉱物等の掘削又は掘採の業務
・ずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務(鉱物等の掘削又は掘採に係る計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、保安管理その他の技術上の管理の業務並びに鉱物等の掘削・又は掘採の業務に従事する者及び鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務に従事する者の技術上の指導監督の業務を除く。)
第65条 産前産後
○2 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
○3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
産前(出産予定まで6週間(多胎出産の場合は14週間)以内)の女性が休業を請求した場合には、その者を使用してはいけません。
産後8週間を経過しない女性は、(6週間経過後に本人が請求し、医師がこれを認める場合を除き)使用してはなりません。
第66条 妊産婦の時間外・休日労働と深夜労働の制限
○2 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
○3 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。
妊産婦の女性が請求した場合、1日及び1週間の法定労働時間を超えて使用すること、また時間外・休日・深夜労働をさせることはできません。
第67条 育児時間
○2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。
この条文と併せて、大規模の事業場にはできる限り託児所を設置することが求められています。
また、1日2回のそれぞれ30分間を有給休暇として扱うことは可能です。
第68条 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置
注意すべき点は、「就業が著しく困難である」場合に休暇が認められ、「就業は困難ではないが生理日である」ことを理由に休暇が認められるものではありません。
また、「就業が著しく困難である」ことが要件である以上、暦日(0時~24時)の休暇に限らず、半日や時間単位での休暇も認められます。
生理期間やその程度には個人差があるために、あらかじめ「生理日の就業が著しく困難である場合の休暇日数」を定めてはいけません。
ただし、その休暇の期間に通常の賃金が発生するか否かについては、労働契約や就業規則などであらかじめ定めることが可能です。
総括
本記事では、労働基準法第56条~第68条を掲載・解説しました。
第68条以降の解説については、以下の記事をご覧ください。
「【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part6」(第75条~第87条)
「【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part7」(第89条~第93条)