【2021年卒の高卒採用試験解禁!】 中小企業の高卒採用活性化のポイントとは?

 
新型コロナウイルスに罹患された方、体調を崩されている方、影響を受けられている方へ、
謹んでお見舞い申し上げます。船井総合研究所、人材ビジネス支援部です。

今回は、人材採用に不安を抱えている中小企業の経営者様・経営幹部の方向けの記事です。

多くの中小企業にとって、人材不足は深刻な問題となっております。そこで今回は、中小企業の人材確保手段としてオススメな高卒採用について、概要や活性化のポイントをお伝えいたします。本コラムを通じて高卒採用についての理解を深め、来年度以降の採用活動の参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

1.高卒採用マーケットについて

まず高卒採用マーケットについて、「これまでの推移」と「2021年の採用状況」という2つの観点から解説いたします。
 

1‐1.これまでの推移

企業において慢性的な人材不足が叫ばれる中、高卒人材の需要は拡大してきました。実際に、厚生労働省の資料を確認してみましょう。
 
図表 高卒者の求人数と求職者数の推移

(出所:厚生労働省『一般職業紹介状況』各年より作成)
 
上図は、2014年卒から2018年卒の高卒者を対象とした、求人数と求職者数の推移を示しています。こちらから、以下の2点が読み取れます。
 

  • ●高卒者の求人数は右肩上がりに増加していること
  • ●求職者数は17万人程度の水準で推移していること

 
求人数でいえば、2014年卒の約30万件に対して、2018年卒は約48万件と1.6倍程度に増加しています。このように、高卒人材の需要は拡大してきたと言えます。
 

1-2.2021年の採用状況

 需要が拡大してきた高卒採用は、新型コロナウイルス拡大による不景気の影響を受けて求人数・求職者数ともに激減しました。
 

図表 2021年3月卒高卒者の採用状況(2020年7月時点) ※赤字は前年同期比
求人数 求職者数 求人倍率
33.6万人、-24.3% 16.2万人、-8.0% 2.08倍、-0.44ポイント

(出所:厚生労働省HPより作成、アクセス日:10月22日 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000178038_00003.html
 
 上図は、2021年3月卒の高卒者について、求人数・求職者数・求人倍率を示しています。こちらから、軒並み前年同期より数値が低下していることがわかります。特に、求人数は-24%と大きく減少しており、その影響を受けて求人倍率も大幅に低下しています。求人倍率とは、1人の求職者(高卒者)にどれだけの求人があるか、という指標です。従って、求人倍率が高いほど求職者が有利な売り手市場、低いほど求人側が有利な買い手市場となります。
 以上を踏まえると、2021年の高卒採用マーケットは、新型コロナウイルスの影響によって買い手市場へと移行しつつある、つまり企業としては採用難度が低下していく可能性があると考えられます。

 

2.これだけは押さえたい!高卒採用のキホン

 高卒採用は大学生などの採用と異なり、いくつかの制限が設けられています。なぜなら、高校生は学校教育を受けることが最優先であると考えられているためです。以下では、高卒採用に当たっての制限について3つの観点で解説いたします。
 高卒採用は、高校が高校生の就職活動に介入する「学校斡旋方式」と、高校生が自ら就職活動に取り組む「自己開拓」の2種類に分かれています。高卒採用のほとんどが学校斡旋で行われているため、今回は学校斡旋方式による採用についての説明となります。
 

2‐1.スケジュール

 高校生の学業を最優先するため、高卒採用は都道府県ごとに採用活動のスケジュールがある程度決められています。2021年卒の採用に関しては、新型コロナウイルスの影響により全国の高校で臨時休校期間が生じたことなどを受け、例年とは異なるスケジュールとなりました。
 

図表 2020年度における高卒者の採用選考スケジュール
日程 内容
6月1日 ハローワークによる求人申込の受付開始
7月1日 企業による学校への求人申込及び学校訪問開始
10月5日(沖縄県は9月30日) 学校から企業への生徒の応募書類提出開始
10月16日 企業による選考開始及び採用内定開始

(出所:厚生労働省HPより作成、アクセス日:2020年10月21日、
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184189.htmlより作成)

 
 上記は、厚生労働省発表の令和2年度における高卒採用者の採用選考スケジュールとなっております。
 学校斡旋の場合、企業はハローワークを通じて高校生に対して求人情報を提供することになるため、まずはハローワークに求人申し込みをする必要があります。
 それから、一定期間を空けたのち、企業から学校に対する働きかけとして、求人申込や学校への訪問が可能になります。
 企業から学校に対する働きかけの期間が3か月程度設けられてから、生徒による企業への選考応募が開始されます。そして、最終的に企業による選考が開始されるという流れになっています。
 高卒採用に取り組む企業は、厚生労働省や管轄の労働局から公表される上記のようなスケジュールに沿って、採用活動を進めていく必要があります。
 

2‐2.1人1社制

 高卒採用には、1人1社制という制度が設けられています。この制度は、一定期間のうちに1人の高校生が選考を受けることが出来る企業は1社に限られる、という制度です。高校生の学業を疎かにさせないため、1人の高校生が複数の内定を獲得して他の学生の就職機会が失われないようにするため、といった目的があります。この制度により、高校生は基本的に内定を得た企業へ就職することになります。
 この制度に関しては各都道府県でルールが異なります。そのため、高卒採用に取り組む企業は自社に適用されるルールについて、管轄の労働局などに問い合わせる必要があります。
 

2‐3.選考ルール

 高校生を保護するため、高卒採用においては選考に関してもいくつかのルールが設けられています。厚生労働省のホームページ(以下HP)によると、具体的には以下のようなルールが掲げられています。
 

  • ●書類だけでの選考はしていけない
  • ●面接日程はできるだけ1日で済むように配慮する
  • ●面接での質問事項は「本人の適性や能力に関係のない事項」を尋ねないようにする

  
 上記のルールを違反した企業に対しては罰則が設けられています。高卒採用の場合、高校生は面接後ハローワークに対して受験報告書を提出することになっているため、ルール違反を隠すことはできません。従って、高卒採用に取り組む企業は、上記のようなルールに沿った選考を行う必要があります。
 
2-4.採用選考に当たって注意すべきポイント
 厚生労働省のHP(URL: https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm)には、高卒採用の選考に当たって企業が配慮すべき事項について、以下3点が掲載されています。
 
●本人に責任のない事項の把握
 例)「本籍・出生地に関すること」
   「家族に関すること」
   「住宅状況に関すること」
   「生活環境・家庭環境などに関すること」など
●本来自由あるべき事項(思想信条にかかわること)の把握
 例)「宗教」
   「支持政党」
   「人生観・生活信条」
   「尊敬する人物」
   「思想」
   「労働組合や学生運動・社会運動に関すること」
   「購読新聞・雑誌・愛読書」など
●採用選考の方法
 例)「身元調査などの実施」
   「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施」など
 
 都道府県によっては、労働局のHPに不適切な質問の例なども掲載されています。高卒採用に取り組む企業としては、厚生労働省や労働局が公表している注意すべきポイントを把握し、そのポイントに則した高卒採用を実施する必要があります。

 

3.中小企業にこそオススメ!高卒採用のメリットとは?

人材不足が顕著である中小企業にとって、高卒採用はとてもオススメです。以下では、中小企業こそ高卒採用を取り組むべきだと考える、高卒採用の3つのメリットについてお伝えいたします。
 

3‐1.内定辞退率が低い

高卒採用の1点目のメリットは、内定辞退率が低いという点です。理由としては、先ほども説明した1人1社制という制度が設けられているためです。高卒採用の場合、内定を出した学生は基本的に入社しますが、1人の学生が複数の内定を獲得する大卒採用では内定辞退が発生します。内定辞退が発生すると、企業側としては辞退した学生に費やしたコストが無駄になることに加え、追加の採用活動が必要となります。従って、1人1社制によって内定辞退率が低いという点は中小企業にとってメリットといえます。
 

3‐2.採用コストが低い

高卒採用の2点目のメリットは、採用コストが低いという点です。理由としては、大卒採用などと比較して採用活動期間が短いためです。先述の通り、高卒採用の活動スケジュールは厚生労働省などによって規定されており、基本的に3か月程度で終了します。一方で大卒採用などの場合、合同説明会・個別説明会の実施やインターンシップの開催など1年を通して採用活動が必要となります。従って、採用活動の期間が短い高卒採用はその分コストがかからないというメリットがあるといえます。
 

3‐3.企業の活性化につながる

 高卒採用の3点目のメリットは、企業の活性化につながるという点です。理由としては、高卒社員は若くから社会人の経験を積み、より早く会社に貢献してくれるようになるためです。大卒採用の場合、最低でも高校卒業後から4年間の時間が発生します。高卒採用で人材を確保した場合、その4年間を人材育成に充てることが出来ます。従って、大卒と比較すると高卒採用のほうが早くから会社に貢献できる人材の育成が可能であり、企業の活性化につながるといえます。

 

4.要注意!高卒採用のデメリットとその要因とは?

高卒採用は「内定辞退率が低い」「採用コストが低い」「企業の活性化につながる」とい
うメリットがある一方で、デメリットも持ち合わせています。以下では、高卒採用によるデメリットについてお伝えいたします。
 

4-1.デメリット:離職率が高い

 高卒採用のデメリットとしては、離職率が高いという点が挙げられます。
 
図表 最終学歴別離職率推移

(出所:厚生労働省『新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移』より作成)
 
 上図は、最終学歴別の3年目までにおける離職率推移を示しています。こちらの図表から、大卒と比較して高卒の離職率が高いということが見て取れます。実際に、2012年卒から2016年卒の職員において、高卒は大卒よりも平均して8%程度、離職率が高くなっています。また、高卒離職率の高さは企業規模が小さくなるほど高くなっています。
 

図表 2016卒、事業所規模別離職率
全規模平均 従業員5人未満 従業員1000人以上
39.2% 64.9% 26.0%

(出所:厚生労働省『新規高卒就職者の事業所規模別離職状況』より作成)
 
 上図は、2016年卒の高卒社員を対象に事業所規模別で3年目までの離職率を示したものとなります。ここから、確かに事業所規模が小さいほど離職率が高くなっているということが確認できます。全規模平均が約40%である一方、5人未満の事業所における離職率は65%と25%以上高く、1000人以上の事業所と比較すると倍以上の離職率となっています。
 このように、中小企業において高卒採用は離職率が高いというデメリットがあります。
 

4-2.要因:情報不足によるミスマッチ

 高卒採用においては離職率の高さがデメリットといえることがわかりました。ではその要因は何なのでしょうか。それは、情報不足によるミスマッチが生じているため、だと考えられます。
 高卒採用のキホンで説明したように、高卒採用のスケジュールは3か月程度と短期間で終了します。高校生にとってこの短期間での就職活動は、将来のキャリアについて考えたり、就職先の企業について調べる時間が少ないという状況につながります。
 このように、学校から紹介された企業を受けて内定がでたら就職する、という高卒採用の現状が企業と高校生のミスマッチを生み、高い離職率を引き起こしていると考えられます。

 

5.必見!中小企業が高卒採用を活性化させる3つのポイントとは?

 中小企業にとって高卒採用は魅力的である分、情報不足によるミスマッチが原因で離職率が高くなっているとお伝えしました。では、中小企業が高卒採用を活性化させるためにはどうすればよいのでしょうか。
結論として、中小企業は「高校訪問」「応募前職場見学」「保護者フォロー」という3つのポイントに注力することが重要です。以下ではそれぞれについて、簡単にご紹介させていただきます。
 

5‐1.高校訪問

 中小企業が高卒採用を活性化させるポイントの1つ目は、高校訪問です。既に高卒採用に取り組んでいる企業様が陥りがちな失敗として、有意義な高校訪問が出来ていないケースが多いためです。
 
 有意義な高校訪問が出来ていないケースとしては、以下のような状況が挙げられます。
 

  • ●重点的に訪問する高校を決めていない
  • ●時期を考えずに訪問している
  • ●先生に自社の魅力を伝えられていない

 
 以上を踏まえて、中小企業が意義のある高校訪問を実施するためには、
 

  • ●応募の見込みが高い「ターゲット高校」を重点的に訪問する
  • ●高校訪問を行う時期・回数を決めておく
  • ●訪問時に話す内容を事前に決めておく

 
 という3つのポイントが重要となります。
 

5‐2.応募前職場見学

 中小企業が高卒採用を活性化させるポイントの2つ目は、応募前職場見学です。応募前職場見学を開催していたとしても、集客活動が疎かになっていたり当日のコンテンツがつまらないものになっている企業様が多いです。
 
 有意義な応募前職場見学ができていないケースとしては、以下のような状況が挙げられます。
 

  • ●生徒が集まらない
  • ●生徒にとってつまらない職場見学になっている

 
 以上を踏まえて、中小企業が意義のある応募前職場見学を実施するためには

  • ●応募前職場見学用のチラシを作成し求人票と一緒に配布する
  • ●生徒目線に立ってコンテンツを作成する

 
 という2つのポイントが重要となります。
 

5‐3.保護者フォロー

 中小企業が高卒採用を活性化させるポイントの3つ目は、保護者フォローです。高卒採用の場合、保護者の一言で高校生自身が応募に至らないケースもあるためです。
 
 保護者フォローが十分にでないケースとしては、以下のような状況が挙げられます。
 

  • ●保護者が自社について情報収集できる環境が整備されていない

 
 以上を踏まえて、中小企業が保護者フォローを十分に行うためには
 

  • ●保護者向けレターや採用パンフレットなどを作成して情報提供する

 
 ということがポイントとなります。

 

6.本コラムのまとめ

本コラムでは、人材不足にあえぐ中小企業が高卒採用をいかに活性化させるかということについてまとめてきました。
  
結論としては、以下3つのポイントに注力することが高卒採用の活性化に当たって重要となります。
 

  • ●高校訪問
  • ●応募前職場見学
  • ●保護者フォロー

 
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