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新型コロナウイルスに罹患された方、体調を崩されている方、影響を受けられている方へ、謹んでお見舞い申し上げます。
中小企業のデジタル化を進める上で知っておきたいIT導入補助金について解説しています。
この制度は、IT導入支援事業者と相談をしながら最適なツールを導入できるので、デジタルに詳しくない方でも、自社のデジタル化を進めることが可能になります。
そこで、この制度を理解していただくため、IT導入補助金制度とはどういうものなのかを解説しています。
1.中小企業におけるデジタル化の効果
少子高齢化で労働力不足が予測される現代において、中小企業にとってデジタル化を活用した生産性向上に取り組むことは非常に重要です。
例えば、当時、従業員40名ほど、年商1億円ほどの企業であった、伊勢神宮の内宮前で大衆食堂を営む「ゑびや」さんは、店舗の来店予測を行うAIを導入しました。
その結果、売上高4倍、従業員の給与アップ、週休二日制の導入を達成し、収益と生産性の向上を実現しています。
他にも
- ・人事管理と給与システムの連携をするシステムを導入し、労働時間を10時間短縮
- ・単純作業を自動化するシステムを導入することで労働時間が月25時間短縮
- ・宿泊予約サイトの一元管理システムにより、サイトの更新作業が半日→1~2時間に短縮
など、生産性向上の事例がたくさんあります。
また、デジタル化により生産性が向上したことで、サービスの質が上がったり、収益が上がったり、労働環境の改善など、副次的な効果も得られます。
一方で、デジタル化に取り組めている中小企業はまだ少ないです。
だからこそ、今の段階で、デジタル化に取り組むことにより、競争優位を築くことが可能になります。
2.中小企業のデジタル化の味方!IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者の生産性向上のためのITツール導入の支援をする事業です。
デジタル化に取り組みたいと思っている中小企業の経営者様でも、昨今の新型コロナの影響で、手元の資金に不安があり、ITツールを導入するべきかどうか悩んでいる方がいらっしゃると思います。
そういった経営者様の背中を押してくれるのがIT導入補助金です。
この補助金では最大で導入費用の3/4、上限額450万円まで補助を受けることができます。
また、ITツールの導入費用の補助だけでなく、導入までのITツールの選定なども、IT導入支援事業者が支援してくれます。
そのため、この制度の利用において、ITやデジタルについての知識は必要ありません。
ITツールやデジタルについてよくわからないし、どう進めたらいいのかわからない…
という方でも、IT導入補助金制度を使うことで、費用を補助してもらいながら、生産性向上のための最適なデジタル化を進めることが可能です。
このIT導入補助金を使ってITツールを導入した、従業員100人以下の企業では、平均して10%ほどの生産性向上を実現しています。
そのIT導入補助金ですが、A類型、B類型、C類型(C類型-1、c類型-2)の3類型あり、細かく分けると4種類あります。
A、B類型は通常枠といわれるもので、中小企業、小規模事業者の生産性向上に寄与するITツール導入支援をするため2017年に始まりました。
導入するITツールの性質によってA、Bに分けられています。
C類型は特別枠といわれるもので、新型コロナウイルスの影響を受けて、施行されたものです。
新型コロナウイルスによる事業への影響や感染拡大防止のための対策として、ITツールを導入する企業を支援します。
C類型は、ITツールの導入目的別にさらに2つに分かれます。
類型の詳細は以下でお伝えします。
3.IT導入補助金が交付されるまで
それでは、IT導入補助金を交付してもらうには何をする必要があるのか、
その流れをみていきます。
IT導入補助金が交付されるまでのステップ以下の表のとおりです
①補助事業について問い合わせ、相談等
まずは、IT導入支援事業者に補助事業について問い合わせることから始めます。
この際、gBizIDプライムの取得が必要になります。
gBizIDプライムは手続きに従えば、簡単に取得可能です。
②ツールの選定
IT導入支援者のサポートを受けながら、自社の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析します。
そして、需要にあったITツールの選定を行います。
③交付申請
IT導入支援者との間で商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。
IT導入支援者と共同で、交付申請に必要な情報入力や書類添付を行い、事務局へ提出します。
④補助事業の実施
事務局より、「交付決定」を受けたのち、ITツールの発注、契約、支払いを行います。
⑤事業実績報告
ITツールの発注、契約、支払いの証憑を提出し、確実に補助事業が行われたことを示します。
事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると、補助金が交付されます。
4.IT導入補助金でできること
IT導入補助金では、どういった経費が補助対象になり、どのくらい補助してもらえるのかを見ていきます。
補助対象事業
〈A、B類型〉
中小企業・小規模事業者が、生産性向上のための業務プロセス改善、効率化に取り組むためのITツール導入
- ・データ入力などの作業を自動化させるためのシステム連携や業務自動化ツールの導入
- ・今まで紙で集計していたデータや管理できていなかったデータをリアルタイムで確認できる業務管理システムの導入
など、様々な場面での業務効率化のためのITツール導入で活用できます。
〈C類型〉
新型コロナウイルスの対応として、以下の甲乙丙のうち、いずれかの目的を含めた上での、生産性向上のためのITツール導入
甲:サプライチェーンの毀損への対応
サプライチェーンの毀損とは、
原料の生産→販売という流れのどこかが、コロナ禍で十分に機能しなくなった状態
- ・外部からの部品調達が困難であるため、内製化するための設備投資
- ・製品の安定供給を継続するため、設備更新を行うための投資
などが甲にあたります。
乙:非対面ビジネスモデルへの転換
非対面ビジネスモデルへの転換とは、
今まで、お客様と対面して行っていたものを対面せずに行うことで、
- ・店舗販売からネット販売への転換
- ・有人レジを無人レジにするための設備投資
などが乙にあたります
丙:テレワーク環境の整備
テレワーク環境の整備とは、
社員がオフィスに出勤せずに、仕事ができるようにすることで、
・勤怠管理システム
・WEB会議システムの導入
などが丙にあたります
補助対象ITツール
補助の対象となるITツールは、中小企業・小規模事業者の労働生産性に資する、
①ソフトウェア(業務プロセス)
②ソフトウェア(オプション)
③役務(付帯サービス)
からなります。
細かい内訳は下記の表の通りです。
※C類型のみハードウェアレンタル費が対象経費となっています。
申請類型について
〈A類型〉
- ・1つ以上の業務プロセス(大分類Ⅰ)を保有するソフトウェアを申請する※上記を満たしていれば、「オプション」、「役務」に係る費用も補助対象となる
- ・補助額が30万円以上150万円未満
- ・補助率は1/2以内
〈B類型〉
- ・4つ以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請する※上記を満たしていれば、「オプション」、「役務」も補助対象となる
- ・補助額が150万円以上450万円以下
- ・補助率は1/2以内
〈C類型-1〉
- ・甲(サプライチェーン毀損への対応)のためのツールのみを導入
- ・補助額は、30万円以上150万円未満もしくは150万円以上450万円以下(後者の場合、賃上げに取り組むことが必須要件)※賃上げ目標については詳細を申請要件のところで後述します
- ・補助率は2/3
〈C類型-2〉
- ・乙(非対面型ビジネスモデルへの転換)か丙(テレワーク環境の整備)のどちらか1つ以上を導入
- ・補助額は、30万円以上300万円未満もしくは300万円以上450万円以下(後者の場合、賃上げに取り組むことが必須)
- ・補助率は3/4
5.気を付けておきたい申請要件
IT導入補助金の交付申請にあたり、要件がいくつかあります。
その中でも特に知っておきたい要件を抜粋してご紹介します。
生産性向上の計画
申請要件として、3年後までの生産性向上の目標を作成する必要があります。
具体的には
・1年後の生産性向上の伸び率が3%以上、
・3年後の伸び率が9%以上
の数値目標の作成をすることとなっています。
賃上げの計画
賃上げの計画はB類型と、C類型-1(補助額150~450万円の場合)、C類型-2(補助額30~450万円の場合)の要件となっています。
具体的な要件には、
- ・3年間で給与支給総額を年率平均で1.5%増加
- ・自社内の最も低い賃金を、地域の最低賃金+30円以上の水準にする
- ・以上の計画を申請時点で、従業員に表明する
となっています。
6.IT導入補助金申請採択のポイント
気になるのが、IT導入補助金の申請がどれだけ採択されるのかということです。
採択率は50%といわれています。
IT導入補助金をもらうためには何をすればよいか
補助金申請の採択率アップのポイントを最後にお伝えします。
それは、加点項目をしっかりと抑えることです
加点項目を抑える
審査をする際に、加点項目がいくつかあります。
加点項目を抑えておくことで、申請が採択されやすくなると考えられます。
・賃上げの計画
こちらは申請要件でも触れましたが、賃上げが要件として必須になっていない申請類型があります。
A類型やC類型-1(補助額30~150万円の場合)、C類型-2(補助額30~300万円の場合)で、
賃上げの計画をすると、加点項目になります。
・導入するITツールとしてクラウド製品、インボイス制度対応製品、テレワーク対応製品を選定している
これらの詳しい説明は、長くなってしまうので割愛しますが、
導入するITツールによっても加点項目になることがあります。
他にも、加点項目として、地域経済牽引事業計画の承認を受けている、などがあります。
いざITツールを導入しようとなった際には、
加点項目について知った上で、どの加点項目を加えられるかという視点が重要です。
ぜひIT導入支援事業者に相談してみてください。
7.まとめ
IT導入補助金という事業がどういうもので、どういったことに役立つのかわかっていただけたでしょうか。
まずは、登録されたIT導入支援事業者と話し合いながら、自社の強み、弱みを分析し、
どのようなITツールを導入すればよいか決めていくことになります。
そのため、ITやデジタルについてよく知っている必要はありません。
また、要件にもあるように、しっかりと生産性向上のための計画を立てられるため、
実現もしやすいと言えます。
これからの少子高齢化による人手不足や、働き方改革などの労働環境の変化などに
しっかりと対応していくため、IT導入補助金を検討してみてはいかがでしょうか。
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