【最新!人材派遣・人材紹介会社の海外進出】日本と中国の労働市場比較と現地人材採用手法

新型コロナウイルスに罹患された方、体調を崩されている方、影響を受けられている方へ、謹んでお見舞いを申し上げます。国際的な人材獲得競争へと企業の関心が高まり、グローバル化を加速する中で世界の数多くの人材サービス企業が続々と中国市場へ進出しています。
本記事では、日本と中国の人材サービス業界の違いに焦点を当て、労働市場、人材採用手法を紹介するとともに、中国で人材事業を立ち上げる際のポイントや注意点まで詳しく解説します!

 

1.人材業界の市場規模について

(1) 日本

日本の人材業界には大きく4つの形態があり、年間約 2600万件の求人を取り扱い、市場規模は、約10兆億円を超えています。

人材業界の市場規模
事業形態 事業所数 年間取扱人数 市場規模
職業紹介(注1) 24,059事業所
(対前年+10%)
約765万件
(対前年+6.6%)
約5,418億円
(対前年度比:+21.9%)
労働派遣(注2) 38,128事業所
(対前年―38.9%)
約69万件
(対前年―2.5%)
6兆3,816億円
(対前年度比:―1.8%)
求人広告(注3) 1767万9752件
(対前年+22.4%)
※広告掲載件数
9,528 億円
(対前年+11.7%)
請負業(注4) 16万件 2兆1,500億円

 
注1 厚生労働省「平成30年度職業紹介事業報告書」
注2 厚生労働省「平成30年度労働者派遣事業報告書」
注3 全国求人情報協会「求⼈情報提供サービス市場規模調査結果および求⼈広告掲載件数等集計結果」
注4 厚生労働省「平成24年 派遣労働者実態調査」

 

(2) 中国

中国の人材業界は、提供しているサービスが一部重複しているが、大きくは、人材紹介、ヘッドハンティング、労務派遣、多種採用チャンネル※、人材評価サービス、外注サービス、データ処理サービス、人材管理サービスなど8つの形態があります。市場規模は1兆7700億元となり、好調が続いています。
※多種採用チャンネルとは、採用(合同就職面接)会、新聞、オンライン採用の総称を指す。
 

【出所】中華人民共和国人力資源社会保障部 「2019年度人力資源発展統計報告」
 

【出所】中華人民共和国人力資源社会保障部 「2019年度人力資源発展統計報告」
 

2.人材業界の今後の動き(共通)

(1) 人材採用×テクノロジー

コロナの影響を受け、オンラインでの「非対面採用」が主流になり、企業が相次いでオンライン求人サービスの取り組みを強化し、オンライン面接の推進に力を入れています。
 
また、AI、ビッグデータ分析、クラウドサービス、O2Oなどのテクノロジーツールの導入により、膨大なデータを一元管理することで、データの収集と可視化、高度な解析ができ、従来の採用プロセスを改善し、採用課題の解決に寄与する。今後求職者のほとんどが自身のデータを求人・自社採用サイト上に登録するようになれば、テクノロジーの導入とともにアナリティクスの能力はさらに向上し、人材獲得・管理に不可欠な要素になります。
 

(2) アウトソーシングが主流に

「リスク分散」という面から見ると、業務の一部をアウトソーシングするのは確実に必要です。テレワーク・リモートワークの導入により、システム開発・運用のアウトソーシング業務も増加しています。テレワークに引っかかるような職種を作り出していく、あるいは柔軟な働き方に対応できる体制を作っていく事で他社との差別化ができます。最近、SNSを通じての企業ブランディングの代行サービス、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、RPO(リクルーティング・プロセス・アウトソーシン)サービスへの注目度が高まっています。
 
情報通信技術の進展に伴って拡大する、国際市場を対象としたアウトソーシングビジネスについて、日本の近接国であり、かつ、「新型インフラ」の整備に重点を置く中国では、アウトソーシング産業の発展に大いに期待することができます。

 

3.現地採用手法のご紹介

(1) 日本

厚生労働省のレポートによると、全入職者の入職経路に占める割合は、人材サービス産業(求人広告&民営職業紹介所)は約4割と、ハローワークの約2倍となっています。特に、求人広告経由の入職件数は1位ており、就業希望者にとって希望する仕事に関する情報を得て就業するための重要な手段になっています。
 
日本における人材採用では、次の5つが代表的な手法として用いられます。

 

ハローワーク 正式には公共職業安定所と呼ばれ、国が運営する職業紹介事業所。
人材紹介サービス 企業の求人依頼に合った人材を紹介する有料のサービス。
求人媒体 複数の求人情報をまとめて掲載し、求職志望者の応募を集める媒体。
ダイレクト・ソーシング 採用側から自ら採用候補者を探しにいく採用手法。
会社説明会 様々な業界・業種の多数の企業が参加しブースを設置し,求職者と直接会って話せるイベント。

 

(2) 中国

中国の人力資源社会保障部の調査によると、主な採用経路は「人材招聘会・人材交流会」,「求人媒体(新聞&インターネット)」,「人材紹介サービス」の3通りに大別されています。中国では、日本のように職階で採用方法を分けるのではなく,主に年収額を基準として採用経路を利用しています。例えば、ヘッドハンティングや人材紹介などの仲介サービスを利用しているのは、ほとんど管理職以上もしくは高度専門職を対象に比較的多く活用されています。新卒の場合は大学など学校におけるキャンパス招聘会が多く使われています。
 
最近、SNSを利用した求人・求職が活発しています。良い人材を採用するため、自社ブランドの認知度向上にソーシャルメディアを活用するケースが多く見られています。

 

4.中国人材市場の開拓における留意点・課題

中国で労務派遣(人材派遣)を起業・参入する際に、「労働契約法」と「労務派遣暫定規定」にて厳しく制限されている点に注意する必要があります。
 
まずは、派遣事業の実施に当たって、行政の許可を得ることが義務付けられています。会社設立の必須条件を備えなければなりません。
①資本金200万人民元以上であること。
②固定の経営場所および施設を有すること。
③「労務派遣管理制度」を有すること。
 
また、「労務派遣暫定規定」によって、派遣先で働く派遣従業員の比率を全従業員の10%以下に抑制するという規制が設けられ、労務派遣事業者と派遣先はそれぞれの立場から対策に乗り出してはいるが、「アウトソーシング・請負の形で派遣される」という新たな課題が生じています。具体的には、一部の業務をアウトソーシングしたが、その業務を請け負ったのは以前の派遣元企業で、請負契約に切り替えた従業員も、労務派遣時と同様に、以前の派遣先の実質的な管理を受けています。それはいわゆる「偽装請負」というものです。
 
そこで、規定を順守し適正な事業運営を進めていくため、以下の3つ手法のいずれかを実施することが必要です。
①派遣従業員の正社員化
②派遣従業員の退職勧奨
③請負化によって外注する
中国の法律に則った“請負基準”を標準化し、中国国内で請負を認知、定着させ、人材ビジネスの本来の姿である適正コストによる生産性の確保と安定した雇用の創出に心掛ける必要があります。

 

5.最後に

今はコロナ禍で多くの人材系企業が苦境に立たされていますが、そのような時期だからこそ新規ビジネスを立ち上げる良い機会ではないでしょうか。中国の人材市場の成長ポテンシャルはいまだに大きいです。日本人材会社経営者の皆さまは、ぜひ中国事業にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
 
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参考サイト
https://www.mhlw.go.jp/content/11654000/000607913.pdf
厚生労働省 「平成30年度 労働者派遣事業報告書」
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/index.html
総務省統計局 「労働力調査」
http://www.mohrss.gov.cn/rlzyscs/RLZYSCSshichangdongtai/202005/t20200519_369066.html
中華人民共和国 人力資源社会保障部 「2019年度人力資源サービス業発展統計報告」(中国語)
http://www.mohrss.gov.cn/SYrlzyhshbzb/zcfg/flfg/gz/201601/t20160113_231678.html
中華人民共和国 人力資源社会保障部 「労務派遣暫定規定」(中国語)

 

 

 

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