【2017年度版】人材業界での起業・独立のススメ―人材紹介編―

今後、さらに伸びる業界として注目される人材業界について解説します。起業・独立の選択肢としての人材ビジネスの魅力をお伝えします。

これから伸びる業界―人材サービス業界―

昨今の日本は様々な問題を抱えています。その最たるものに「少子高齢化」があります。
内閣府の発表では、現状で日本の総人口は減少し続けており、2048年には1億人を割ると見込まれています。人口の減少はすなわち国内市場の縮小を意味しますが、一方で世界の人口は2050年には現在の73億人から94億人~100億人に達する可能性が高いとされています。つまり、「世界の市場」は成長し続けているのです。「世界の市場」に参入するためのインフラとして「IT」も無視できません。

ここまでで出てきた「少子高齢化」「世界の市場(グローバリズム)」「IT」が、今後の注目すべきキーワードとなるでしょう。

加えて、日本は未だに男女の格差が問題視されていますが、これを起因に「働き方の革命」も起きています。「少子高齢化」も伴って、女性や高齢者の労働市場への参入が今後更に増えていくことが予想されます。

このような社会構造の変化に合わせて、業界や企業に求められるニーズや期待も変化してきていますが、特に注目すべき業界のひとつとして、「人材サービス業界」についてご紹介します。

人材サービス業界の種類と市場

“人材サービス”とひとくちに言っても、その形態には4つの種類があります。

・人材派遣
➢ 5.4兆円
・請負
➢ 1.5兆円
・求人広告
➢ 1兆円
・職業紹介
➢ 3000億円
※記事作成時点(2017年1月現在)で判明、確定している資料に基づきます。

人材サービス業全体の市場規模はおよそ8兆円です。
これは、近年伸びてきている介護などと匹敵する規模ですから、かなり大きい市場であることがわかります。
その人材サービス業界の中でも特に大きい市場は「人材派遣業」ですが、今回は「職業紹介業」について紹介していきます。理由は後述していきますが、実は「人材派遣業」以上に「職業紹介業」は魅力的な業界なのです。

人材紹介とは

人材紹介会社とは、厚生労働大臣の許可を受けて職業を紹介する業態の会社のことを指します。

人材紹介会社は、取引先企業に候補者を紹介し、雇用が決定した場合に雇用契約を結ぶのは取引先企業とその候補者になります。
人材派遣会社との最も大きな違いは、雇用契約を結ぶか結ばないかの点になります。

<コラム>人材派遣とは

人材派遣会社とは、読んで字のごとく人材を派遣する会社です。
より具体的に言えば、特定のスキルを持つ人材を雇用し、その人材を欲しがっている企業に提供する会社です。

正社員やパートと最も異なるのは、「雇用契約を結ぶ会社」と「実際に働く会社」が違うという点です。
正社員やパートであれば、雇用契約を結んだ会社で働き、給料が発生します。

一方で、派遣社員は「派遣会社」と雇用契約を結び、「派遣先企業」に労働を提供します。そのため、業務の指示などは「派遣先企業」から受けますが、給与は「派遣会社」が支払います。

なお、派遣には大きく分けて「一般派遣」、「特定派遣」※1、「紹介予定派遣」の3つに分けられます。
・一般派遣(登録型派遣)
➢ 派遣の仕事を希望する人材を人材派遣会社に登録し、希望や条件に合う派遣先企業との派遣契約が結ばれた時に、派遣社員として雇用契約を結びます。
・特定派遣
➢ 派遣会社と派遣社員が正社員同様(無期限)の雇用契約を結んでおり、必要に応じて派遣先企業に派遣されますが、派遣契約終了後も派遣会社での業務が継続します。システムエンジニアなどの一定のスキルが必要な業種に多いです。
・紹介予定派遣
➢ 派遣社員が派遣先企業と直接契約(正社員・契約社員)を結ぶことを前提に、一定期間(6ヶ月まで)の人材派遣を行うシステムです。

※1 H27年の派遣法改正により、一般派遣と特定派遣の法的な区分はなくなり、すべて許可制になりました。
(旧)一般派遣:厚生労働大臣の許可が必要
(旧)特定派遣:厚生労働大臣の「届出が必要」→「許可が必要」に改正

なお、人材紹介会社は、サービスの形態によって以下のように3つに分類できます。
・一般紹介・登録型
➢ 求人の依頼を受けてから、求職者に企業を紹介し、希望する候補者を求人者に紹介する最もポピュラーな形態です。
・サーチ型
➢ 求人の依頼を受けてから、条件に合う現役で働いている人材を求人者と引き合わせます。ヘッドハンティングとも呼ばれ、役員クラスでの求人依頼が主になります。
・再就職支援型
リストラの対象になった社員等を再就職できるように支援する形態です。

人材紹介業の魅力

先述しましたが、「人材紹介業」が人材サービス業に占める市場規模の割合は最も小さいです。
ではなぜ、最も市場規模の大きい「人材派遣業」以上に魅力的な業界と言えるのでしょうか。
それは、以下にあげるメリットがあるからです。

・求人企業側のメリット
➢ 採用が決定した時の成功報酬型のため、費用対効果が確実に得られる
➢ 採用の実務を軽減できるため、コストの削減になる
➢ 秘密裏に採用を行いたい場合などに有利
➢ 採用を急いでおり、公募では間に合わない場合に有利
・求職者側のメリット
➢ 登録や相談が無料のため、コストがかからない
➢ キャリアコンサルタントが介在するため、最適な企業を紹介してもらえる
➢ 選考過程で様々なサポートを得られる
➢ 企業の情報が事前にわかるため、ミスマッチが少ない
➢ 在職中でも転職活動が行える

このように、利用する企業と求職者共にメリットが大きく、社会的貢献性の高い事業といえます。

求職者にメリットが大きい職業紹介業ですが、求人企業にとってもメリットが大きい、それどころか、実際には人材派遣業よりもニーズがより高いのです。
先ほどは売上ベースで市場規模を見ていましたが、今度は取扱求人数ベースで市場規模を見てみましょう。
・人材派遣
➢ 82万件
・請負
➢ 3.2万件
・求人広告
➢ 545万件
・職業紹介
➢ 344万件

求人広告には及びませんが、それでも人材派遣業よりニーズが高いことがわかります。
公募では求めている人材が集まらなかったり、派遣ではミスマッチが起きてもコストがかったり、そういったデメリットを解消してくれるというメリットが、最も注目されている点だといえるでしょう。

以上のように、人材紹介業は市場規模こそ大きくはありませんが、非常に魅力的な業界ということができるのです。

人材紹介を行うには

人材紹介業を行うには、以下のようなフローで申請を行う必要があります。

それぞれ、順を追って解説していきます。

職業紹介責任者講習の受講

人材紹介業を行うには、社内に「職業紹介責任者」が1人以上必要です。
この「職業紹介責任者」は特に勉強が必要なものではなく、全国の主要都市で定期的に行われている「職業紹介責任者講習」を受講するだけで資格を取得できます。
受講に関しては、年齢や職業の如何にかかわらず、受けることができます。
申し込みについては、厚生労働省のホームページ内に案内があります。

申請

人材紹介事業を行う場合は、事務所を置く都道府県の労働局に必要書類※1を提出する必要があります。
また、許可申請は事業開始予定時期のおおむね2~3か月前までに行う必要があります。
許可申請の際、「許可手数料(5万円~)」と「登録免許税(9万円)」を納付する必要があります。

※1 以下の書類が必要です。

有料職業紹介事業許可申請書(様式第1号)3部(正本1部、写し2部)

有料職業紹介事業計画書(様式第2号)3部(正本1部、写し2部)

届出制手数料届出書(様式第3号)3部(正本1部、写し2部)

➢ 上限制手数料による場合には提出は不要です。

なお、届出制手数料(上限制手数料)については、「紹介手数料で受け取れる金額の上限
」にて後述します。

添付書類2部(正本1部、写し1部)

申請に際して、以下の基準をクリアしている必要があります。

財産基準

なお、事務所の広さの規定が別途で存在しますが、インターネットによる対面を伴わない職業紹介のみを行う場合には、面積の要件はなくなります。

職業紹介してはいけない業務や、紹介手数料についての規定があります。
・職業紹介が禁止されている業務
➢ 港湾運送業
➢ 建設業

紹介手数料で受け取れる金額の上限

有料職業紹介事業の紹介手数料については、「上限制手数料」と「届出制手数料」のいずれかを有料職業紹介事業の許可申請時に選択し徴収することができます。

現状のビジネスモデルでは「届出制手数料」を選択するケースが大半のようです。
・上限制手数料(厚生労働省で定める手数料)
➢ 支払われた賃金額の10.8%相当額を上限に徴収できます。
・届出制手数料
➢ 求職者の年収の50%を上限に徴収できます。

総括

職業紹介業の市場規模は年々増加傾向にありますが、将来的にはどうなっていくのでしょうか。

雇用構造の変化

女性雇用者がかなり増えてきている今、働き方もかなり変わってきています。
更に、超高齢化社会が目前に迫っていることから、高齢者も徐々に労働市場へ参入してくることが予想されます。

これらの問題は、求職者のキャリアプランのサポート、キャリアチェンジの支援、中高年層の活用などの必要性を示唆しています。

特に、「中高年層の活用」では、リストラの対象になった社員(特に中高年層が多い)の再就職を支援する「再就職支援型」の職業紹介事業が活躍する可能性を秘めています。

サービス経済化

2020年にかけて、サービス職は105万人、専門技術職は43万人増加し、運輸通信職は323万人減少するといわれています。
このような職種間の就業者の移動は、働き手にとっては容易なことではありません。特に中途採用では即戦力が求められますが、自分の経験上にやったことのある職種や業種への移動は困難になってくるでしょう。
表面上は関係のない職種や業種でも、求職者ひとりひとりの適性やスキルを異業種に活かすサポートの必要性が示唆されています。
ここで、キャリアコンサルタントの出番になります。
職業紹介業においては、就業中でも転職活動ができるという強みを生かしながら、求職者にとって最善のキャリアチェンジをサポートすることが期待されます。

グローバル求人の増加

企業の海外進出に伴い、現地で人材を採用するケースに加え、海外の人材を日本国内で募集する企業も増加傾向にあります。
特に、平成26年度における海外からの求職者の申込数は前年度比で50%近く増加しています。一方で、就職件数は増加したり減少したりと安定せず、背景には国ごとに異なる手続きの煩雑性にあるようです。職業紹介業としては、各国のマーケットに対応し、また外国人の日本での就労をサポートする「就業管理機能」としての役割を果たすことが期待されます。

以上のように、日本の労働市場に控える課題は多いです。しかし、課題が多いということは、人材サービス業としてはこれとないビジネスチャンスということができるのではないでしょうか。特に、職業紹介業に対する社会的期待は大きく、それだけに責任の大きい業界といえるでしょう。

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