【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part7【就業規則】

就業規則とは?なにを書けばいいの?
労働基準法の特に重要な条文をピックアップし、わかりやすく解説します。

労働基準法とは?

労働基準法は、憲法25条と27条に基づき、労働者の権利を守るために制定された法律です。(第1条)
労働者と使用者(企業)は対等な立場であり、お互いに就業規則や労働契約を守る義務があります。(第2条)
労働基準法における労働者とは、職業の種類を問わず、事業(事務)所に使用され、賃金を支払われる者をいいます。(第9条)
労働基準法における賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他の名称の如何を問わず、労働の対象として使用者(企業)が労働者に支払うすべてのものを指します。(第11条)

労働基準法の基本は以上の条文になります。以下では、第89条~第93条を解説していきます。

なお、労働基準法の条文全体における本記事の位置づけは以下のようになっています。

第一章 総則
第二章 労働契約
第三章 賃金
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
第五章 安全及び衛生
第六章 年少者
第六章の二 妊産婦等
第七章 技能者の養成
第八章 災害補償
第九章 就業規則
第十章 寄宿舎
第十一章 監督機関
第十二章 雑則
第十三章 罰則
附則

第89条 作成および届出の義務

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一  始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二  賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三  退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二  退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四  臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五  労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六  安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七  職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八  災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九  表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十  前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成する義務が生じます。
以下の項目についての就業規則を作成し、またこれらを変更する際には行政官庁(労働基準監督署長)に届け出なければなりません。

必ず記載しなければならない事項

・始業時間、就業時間、休憩時間、休日、休暇、(交代勤務の場合は)交代時間
・賃金(臨時の賃金を除く)の決定、計算方法、支払方法、支払時期、賃金の締切り、昇給に関する事項
・退職に関する事項(解雇の事由も含む)

その定めがある場合に記載しなければならない事項

・退職手当の適用される労働者の範囲、計算方法、支払方法、支払時期
・臨時の賃金、最低賃金額に関する事項
・労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
・安全衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰、制裁の種類と程度に関する事項
・上記以外で、事業場の労働者すべてに適用される定めに関する事項

なお、派遣業に関しては、「派遣中の労働者とそれ以外の労働者とを合わせて常時10人以上を使用している派遣元の使用者」が、就業規則の作成義務を負います。

第90条 作成の手続

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
○2  使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

就業規則を作成、届出をする際には、労働組合(労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)からの意見書を添付しなければなりません。
なお、労働者の過半数が仮にこの就業規則に反対であったとしても、協議があったことが客観的に認められる場合は届出は受理され、就業規則の効力に影響はありません。

第91条 制裁規定の制限

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

就業規則で労働者意に対しての減給の制裁を定める場合は、ひとつの事案の減給額が、平均賃金の半額を超えてはなりません。
また、複数事案の減給額の総額が一賃金支払い期間(ひと月分の賃金)の10%を超えてはなりません。

なお、制裁の形態としての「出勤停止」では、出勤していないことから当然賃金は発生しませんが、第91条ではあくまでも「減給」の制裁に関する制限ですから、「出勤停止」による賃金の不払いは問題ありません。

一方で、以下の「遅刻・早退」と「賞与」の減給については注意が必要です。

遅刻・早退

遅刻・早退の時間分の減給(=出勤していない部分の減給)は問題ありませんが、その時間分以上の減給は制裁とみなされ、第91条の適用を受けます。

賞与

賞与から減給する制裁の場合は、賞与を賃金とみなし、第91条の規定を受けます。

第92条 法令及び労働協約との関係

就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
○2  行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。

第90条では労働者の過半数が反対である就業規則でも受理され、効力が保たれるとしていますが、労働組合との労働協約が交わされている場合はこれに従う必要があります。

第93条 労働契約との関係

労働契約と就業規則との関係については、労働契約法 (平成十九年法律第百二十八号)第十二条 の定めるところによる。

ここで労働契約法の第12条を見てみましょう。

労働契約法 第12条 就業規則違反の労働契約

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

労働者との労働契約を交わし、既にその労働条件の合意があったとしても、就業規則で定めている労働条件の水準に満たない場合は、その部分は無効となり就業規則が適用されます。

※労働契約法についての詳細は「【2017年最新版】労働契約法ピンポイント解説」をご覧ください。

総括

本記事では、労働基準法第89条~第93条を掲載・解説しました。
以上で、労働基準法における重要条文の解説は終わりになります。

法律の条文というと、堅苦しい文章でかつ文量が多く、読む気がなくなってしまうかもしれません。
しかし、よくよく読めば対して難しいことは書いて無く、むしろ当然のことが書いてあることが多いのです。
経営者の方のみならず、社員の方やパート・アルバイトの方にも理解が必要な法律ですので、今一度熟読いただき、ご理解いただければと思います。

関連記事は以下の通りです。
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part1」(第1条~第23条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part2」(第24条~第36条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part3」(第37条~第38条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part4」(第39条~第41条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part5」(第56条~第68条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part6」(第75条~第87条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part7」(第89条~第93条)

参考サイト

法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ―労働基準法

情報公開推進局TOP~JOSHRC―労働基準法関係解釈例規

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