【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part4【年次有給休暇】

有給休暇の日数は?計算は?労働時間の適用除外とは?
労働基準法で特に重要な条文をピックアップし、わかりやすく解説します。

労働基準法とは?

労働基準法は、憲法25条と27条に基づき、労働者の権利を守るために制定された法律です。(第1条)
労働者と使用者(企業)は対等な立場であり、お互いに就業規則や労働契約を守る義務があります。(第2条)
労働基準法における労働者とは、職業の種類を問わず、事業(事務)所に使用され、賃金を支払われる者をいいます。(第9条)
労働基準法における賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他の名称の如何を問わず、労働の対象として使用者(企業)が労働者に支払うすべてのものを指します。(第11条)

労働基準法の基本は以上の条文になります。以下では、第39条~第41条を解説していきます。

なお、労働基準法の条文全体における本記事の位置づけは以下のようになっています。

第一章 総則
第二章 労働契約
第三章 賃金
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
第五章 安全及び衛生
第六章 年少者
第六章の二 妊産婦等
第七章 技能者の養成
第八章 災害補償
第九章 就業規則
第十章 寄宿舎
第十一章 監督機関
第十二章 雑則
第十三章 罰則
附則

第39条 年次有給休暇

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
○2  使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。
六箇月経過日から起算した継続勤務年数 労働日
一年 一労働日
二年 二労働日
三年 四労働日
四年 六労働日
五年 八労働日
六年以上 十労働日
○3  次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
一  一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
二  週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者
○4  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
一  時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
二  時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)
三  その他厚生労働省令で定める事項
○5  使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
○6  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
○7  使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法 (大正十一年法律第七十号)第九十九条第一項 に定める標準報酬日額に相当する金額又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
○8  労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号 に規定する育児休業又は同条第二号 に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

かなり長い条文ですが、それだけに重要な条文ですので、詳しく解説していきます。

1. 年次有給休暇の付与

年次有給休暇は、雇入れ日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の80%以上出勤した労働者に対して、連続、あるいは分割した10日間以上の年次有給休暇を与えなければなりません。

2. 年次有給休暇の加算

以下の要件を満たす労働者には、勤務年数に応じて、付与される年次有給休暇を増やさなければなりません。

1 6か月以上継続勤務し、全労働日の80%以上出勤していること

2 1年と6か月以上継続勤務した労働者は、6ヵ月経過から1年ごとの期間で全労働日の80%以上出勤していること

・継続勤務とは、出勤ではなく労働契約の有効期間のことを指します。
・全労働日とは、労働義務がある日のことを指します。(パートタイム労働者の場合は、労働が予定されている日を指します。)

勤務年数に応じた年次有給休暇の付与日数

3. パートタイム労働者などへの年次有給休暇の付与・加算(比例付与)

以下の要件を満たす労働者には、勤務年数に応じて、付与される年次有給休暇を増やさなければなりません。

1 6か月以上継続勤務し、全労働日の80%以上出勤していること

2 1年と6か月以上継続勤務した労働者は、6ヵ月経過から1年ごとの期間で全労働日の80%以上出勤していること

継続勤務とは、出勤ではなく労働契約の有効期間のことを指します。

以上の要件を満たしたうえで、以下のように労働日数に応じて年次有給休暇を付与します

以下の要件のいずれかを満たす労働者には、一般の労働者と同じ日数の年次有給休暇を付与しなければなりません

1 1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者

2 1週間の所定労働日数が5日以上の労働者

4. 時間単位の年休

労使協定がある場合、年に5日まで、時間単位で年次有給休暇を与えることができます。

5. 年次有給休暇の取得

労働者は、いつでも自由に年次有給休暇を取得でき、使用者(企業)は「事業の正常な運営を妨げる場合」など特段の事情がない限り、その日に取得させなければなりません。

関連条文 第115条 時効

この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

退職手当の請求権は5年間、これ以外は2年間が時効です。
前述の年次有給休暇の請求権は2年間で消滅します。

第40条 労働時間及び休憩の特例

別表第一第一号から第三号まで、第六号及び第七号に掲げる事業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、第三十二条から第三十二条の五までの労働時間及び第三十四条の休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。
○2  前項の規定による別段の定めは、この法律で定める基準に近いものであつて、労働者の健康及び福祉を害しないものでなければならない。

週の法定労働時間は40時間ですが、対象の事業では特例として44時間を法定労働時間とすることができます。

特例事業

常時10人未満の労働者を使用する次の事業

・商業
・映画・演劇業(映画製作の事業を除く)
・保護衛生業
・接客娯楽業

注意すべき点は、週の法定労働時間が44時間になるだけで、1日の法定労働時間は8時間と変わらない点です。

第41条 労働時間等に関する規定の適用除外

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一  別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

この章(第4章)は第32条~第41条までのことを指します。
※第六章及び第六章の二(第56条~第68条)については下記の該当記事をご覧ください。

この条文の一、二、三に規定される労働者は、労働時間や休憩及び休日に関する規定の適用を受けません。以下、適用除外となる労働者です。
1 農業または水産業の事業に従事する労働者(平六・一・四 基発一号、平一一・三・三一 基発一六八号)
2 事業経営の管理的立場にある者(管理監督者)またはこれと一体をなす者(秘書など)
3 監視労働者または断続的労働に従事する者で行政官庁(労働基準監督署長)の許可を受けた者

総括

本記事では、労働基準法第39条~第41条を掲載・解説しました。
第41条以降の解説については、以下の記事をご覧ください。

【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part5」(第56条~第68条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part6」(第75条~第87条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part7」(第89条~第93条)

人材募集力の強化・採用力アップなど、人材紹介・人材派遣会社向けの業績アップを目的とした会員制の勉強会「人材ビジネス経営研究会」を開催!
お試し参加大歓迎!初回は無料でご参加いただけます。

⇒詳細は下の画像をクリック!

参考サイト

年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省

法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ―労働基準法

情報公開推進局TOP~JOSHRC―労働基準法関係解釈例規

このまとめが気に入ったら
「いいね!」をしよう

この記事のキーワード



無料メルマガ

無料レポートダウンロード

LINE 人材ビジネス経営の最新情報配信中!

無料経営相談
無料メルマガ 無料レポートダウンロード LINE 人材ビジネス経営の最新情報配信中! 業界に強い船井総研のM&A