【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part3 【割増賃金・みなし労働】

時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金率は?みなし労働時間制、裁量労働制って何?
労働基準法で特に重要な条文をピックアップし、わかりやすく解説します。

労働基準法とは?

労働基準法は、憲法25条と27条に基づき、労働者の権利を守るために制定された法律です。(第1条)
労働者と使用者(企業)は対等な立場であり、お互いに就業規則や労働契約を守る義務があります。(第2条)
労働基準法における労働者とは、職業の種類を問わず、事業(事務)所に使用され、賃金を支払われる者をいいます。(第9条)
労働基準法における賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他の名称の如何を問わず、労働の対象として使用者(企業)が労働者に支払うすべてのものを指します。(第11条)

労働基準法の基本は以上の条文になります。以下では、第37条~第38条までの特に重要な条文をピックアップし、解説していきます。

なお、労働基準法の条文全体における本記事の位置づけは以下のようになっています。

第一章 総則
第二章 労働契約
第三章 賃金
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
第五章 安全及び衛生
第六章 年少者
第六章の二 妊産婦等
第七章 技能者の養成
第八章 災害補償
第九章 就業規則
第十章 寄宿舎
第十一章 監督機関
第十二章 雑則
第十三章 罰則
附則

第37条 時間外、休日及び深夜の割増賃金

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
○2 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
○3 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
○4 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
○5 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

使用者(企業)は、労働者に時間外労働や深夜労働(22時~5時)をさせた場合には、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
また休日労働は、通常の賃金の35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

なお、それぞれの割増賃金率は独立しているため、以下のようなケースでは割増率が合算されます。
1. 時間外労働+深夜労働=50%以上の割増率
2. 休日労働+深夜労働=60%以上の割増率

第38条 時間計算

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
○2  坑内労働については、労働者が坑口に入つた時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。但し、この場合においては、第三十四条第二項及び第三項の休憩に関する規定は適用しない。

この条文では、異なる事業場(事業主)での労働も1日の法定労働時間の適用を受ける、ということを規定しています。
具体的にこの条文が焦点となり得るのは、以下の労働者のケースが考えられます。
1. 使用者Aの事業所aと事業所bで5時間ずつ働く
2. 使用者Aの事業所aで5時間働いた後、使用者Bの事業所cで5時間働く

1のケースの場合は、事業場が変わっているだけなので、1日の法定労働時間超過分の2時間は時間外労働となり、使用者Aに割増賃金の支払いが求められます。

2のケースの場合は、それぞれ別の使用者による労働ですが、こちらも1日の法定労働時間の適用を受けるので、超過分の2時間は時間外労働となり、その時点で労働を提供している使用者Bに割増賃金の支払い義務が生じます。
なお、使用者Aの指示によって使用者Bのもとで労働をさせ、割増賃金が発生した場合は、使用者Aがこれを支払うことになります。
労働者がそれぞれの使用者に内密に掛け持ちをしていた場合、どちらの使用者が割増賃金を払わなければならないかは行政の判断に委ねざるを得ません。

このようなトラブルを防ぐために、労働者に対して掛け持ちを制限したり、許可制をとって掛け持ちを把握することが一般的です。

第38条の2 (事業所外)みなし労働時間制

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
○2  前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
○3  使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

労働者が外回りの営業や出張などで労働時間の算定が困難な場合は、所定の労働時間を労働したものとみなすことを定めた条文です。
1日の法定労働時間は8時間ですが、これを超えて労働しなければ到底なしえない業務である場合には、法定労働時間を超えてみなし労働時間を定めることができます。法定労働時間を超えた分は時間外労働となるので、その分の割増賃金をあらかじめ労働者に払う必要があります。

第38条の3 専門業務型裁量労働制

使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。
一  業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
二  対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
三  対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
四  対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
五  対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
六  前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
○2  前条第三項の規定は、前項の協定について準用する。

法令で定めた専門的業種(研究、情報分析・設計、マスコミ、デザイン、士業等)においては、労使協定で1日あたりの労働時間を定め、それをみなし労働時間とします。1日の法定労働時間は8時間ですが、法定労働時間を超えてみなし労働時間を定めることができます。法定労働時間を超えた分は時間外労働となるので、その分の割増賃金をあらかじめ労働者に払う必要があります。

総括

本記事では、労働基準法第37条~第38条までを掲載・解説しました。
第38条以降の解説については、以下の記事をご覧ください。

【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part4」(第39条~第41条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part5」(第56条~第68条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part6」(第75条~第87条)
【2017年最新版】労働基準法ピンポイント解説 Part7」(第89条~第93条)

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参考サイト

法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ―労働基準法

情報公開推進局TOP~JOSHRC―労働基準法関係解釈例規

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